総武線の怖い話

これはOさんがJR総武線で体験した怖い話。

Oさんは、月に一度、総武線を使って病院に通院していた。

行きは通勤通学のラッシュ時間に被るので座ることはできないが、帰りの電車は比較的すいていて座って帰れるのが常だった。

その日も、Oさんは、帰りの電車で空いている席を見つけて座ることができた。
電車に揺られていると、すぐに眠気が襲ってきて、ウトウトしてきた。

しばらくして、トン、と座席のクッションが沈み込み、隣に誰かが座った感触があった。
気にせず、まどろんでいたのだか、声が聞こえてきてOさんは眠りから引き戻された。
なんだか、揉めているような男の人の声がしたのだ。
何を話しているのかまでは電車の音でわからなかったが眠りを妨げるには十分だった。
揉め事なら他でやって欲しいなとOさんは思ったが、目を瞑ったまま、気にしないでいることにした。

しかし、2、3駅待ってみても、言い争いが終わる気配がない。
一体、何をそんなに揉めているのだろうと思って、耳をすませてみると、どうも声は一種類しかないことにOさんは気づいてしまった。
・・・独り言?
ゾワッとして、Oさんは思わず目を開けて、隣を見た。

Oさんは目を疑った。
隣には誰も座っていなかったのだ。
つい一瞬前まで確かに会話が聞こえていたのに、
その車両にはOさん以外、誰も乗っていなかった。

さっきの声はいったい、、、
Oさんは、怖気を感じて、次の駅に到着するや、転がるように電車を降りた。
気持ちを落ち着けようと立ちつくす間に、電車は風を切って、走り去っていった。

電車が去った後の静寂が駅のホームを包んだ。
次の瞬間、Oさんは耳元で、誰かが舌打ちする大きな音を聞いた。
しかし、振り返っても誰もいなかった。

その後、Oさんは、慌てて改札を抜け、別の路線で家に帰ったという。

その日以来、総武線で恐ろしい体験をしたことはないそうだが、今でも、あの日の出来事は鮮明に記憶に残っているという。

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