【怪談】大阪のホテルの怖い話

 

先日、大学の男友達3人で大阪観光に行った時に体験した怖い話だ。

東京駅から約2時間半。
新大阪駅に降り立つと、うだるような暑さだった。
大阪の本格的な粉物を食べたいという話から始まった今回の旅行。
大阪・梅田を観光した後、心斎橋からなんばまで歩いた。
途中食べ歩きしながら、面白そうなお店を見つけたら入るを繰り返し、気づけばあっという間に夕食の時間だった。
ネットで見つけたお好み焼きで有名なお店で夕飯を食べて、その後、居酒屋で飲んでいると新幹線の終電が過ぎてしまった。
予定では日帰りするはずだったけど、誰も明日の予定があるわけではないので、大阪で一泊することにした。
日付けが変わる頃まで飲んでから、
なんば駅近くのビジネスホテルに向かった。
居酒屋を出る前にスマホで調べて、運良く空いているホテルを見つけていた。

ホテルは低層で小さかった。
安くて空いていたところなので、だいぶ古そうな佇まいだ。
僕たちはそれぞれカードキーを受け取って、部屋に向かった。
3人並びの部屋はさすがに難しかったけど、
僕とAは隣り合わせ、もう1人のBはAの部屋の上階がとれた。

部屋はごく普通のシングルルームで、ベッドとユニットバスがあるだけ。
僕は部屋に入るなり、荷物を放り投げてベッドに倒れこんだ。

どれくらい眠ったのだろう。
ハッと目が覚めた。
腕時計を見ると、深夜2時だった。
変な時間に起きてしまったなと思って、
再び目をつむると、声が聞こえた。

フフ・・ハハ・・

女性がいたずらっぽく笑っているような声だった。
声はAが泊まっている部屋から聞こえた。
まさかAのヤツ、女性を部屋に連れ込んだのだろうか、そんなことが頭をよぎった。

フフフ・・・ハハ・・

やはり聞き間違いではない。
明日起きたら、からかってやろうと思いながら、僕は再び眠りについた。

次に目覚めたのは、ノックの音だった。
寝ぼけ眼で、ドアを開けるとAが青い顔をして立っていた。
「どうした?」
時計を見ると3時過ぎ。さっきから1時間くらいしか経っていない。
「なぁ、お前の部屋で眠ってもいいか?なんかオレの部屋、ヘンなんだよ」
「ヘンって?」
「笑うなよ・・・オレが寝てたら、ベッドの脇に女が立っていたんだ」
「え・・・」
さきほどの女性の笑い声が頭に浮かんだ。
「じっとこっちを見つめてきて、しばらくしたらスーッと消えた」
普段なら信じなかったかもしれないけど、
さっきAの部屋から聞こえた声が、偶然とは思えなかった。

Aは、床でいいと言って、バッグを枕に横になった。
Aの部屋にいたという女の人については、それ以上話さなかった。
しばらく眠れなかった。
別のことを考えようと思っても気がつくとAの部屋に現れたという女の人のことを考えていた。
Aが目撃したのは本物の幽霊だったのだろうか。
背中を向けているのでわからないがおそらくAも寝れていないだろう。
そうこうしているうちに時間が過ぎていき、4時過ぎに浅い眠りの波がようやくやってきた。

スマホのアラームの音で起きるとAの姿がなかった。
Aの部屋をノックをしても反応なし。
と、上の階に泊まっているBがやってきた。
「A見なかったか?」
まさにBに尋ねようとしていた質問をBからされたので僕は面食らった。
聞くと、昨日の深夜にAがBの部屋にやってきて、
部屋が気味が悪いので寝かせて欲しいと言ってきたのだという。
Aが訪ねてきた時間を尋ねると、たしか3時過ぎだとBはいった。
僕の部屋にAがいた時刻とまったく被っていた。
二つの場所に同時にAが存在したことになる。
そんなことがありえるだろうか・・・。
2人とも自分の記憶違いはないと主張しているとガチャッと少し離れた部屋のドアが開いて、Aが出てきた。
「A!お前、なにやってんだ?なんで全然別の部屋にいるんだよ!?」
僕とBが2人とも驚いているとAは言った。
「それがさ・・・」
Aが言うには、昨日、部屋で寝ていたら金縛りにあってお風呂場の方からいるばずのない女性の笑い声が聞こえたので、気味が悪いので部屋を替えてもらったのだという。
「何時頃の話?」
「1時過ぎかな。2時はいってなかった」
僕とBは顔を見合わせた。
Aが嘘をついていないなら、僕とBの部屋にいたAは、
どちらも本当のAじゃないということだ・・・。

その時、もともとAが泊まっていた部屋から、
フフ・・・ハハハ・・と女性の笑い声が微かに聞こえた。
僕たちは逃げるようにホテルを後にした。

アレは一体なんだったのか。
幽霊のイタズラなのか、それとももっと恐ろしい何かだったのか、
それは今もわからない。

#364

-ホテル・旅館の怖い話, 怖い話