ビックカメラなんば店の怖い話

 

先日、女友達と大阪旅行に行った時の話です。
なんばのホテルにチェックインして荷解きしているとスマホの充電器を忘れたことに気がつきました。
友達とはメーカーが違うので、互換性がありませんでした。
調べてみたら、ホテルの近くにビックカメラがあったので、
私は充電器を買いに行くことにしました。

夕暮れ前でしたが、
ビックカメラは大勢のお客さんで溢れていました。
スマホのアクセサリー類は1階にありました。
陳列棚を眺めて、どれにしようか選んでいると、
ふと視線を感じました。
横を向くと、女の人が人混みの中からこちらを見ていました。
女の人の髪は明るいソバージュで派手な赤いジャケットを着ていました。
その人は、じっと立っているだけでした。
ふいに何かが焦げたようなニオイがしました。
近くの飲食店で料理でも焦がしたのかなと思って、
辺りを確認しているうちに、女の人はいなくなっていました。

充電器を買い終えると、少しだけ家電を見たくなって、
エスカレーターで上っていきました。

4階のアップルショップを眺めて、5階に向かおうとした時です。

あれ、と思いました。
1階にいた赤いジャケットの女性がいたのです。
背中を向けていましたが、
特徴的な赤いジャケットにソバージュの髪は間違えようがありません。
女性はやはり何をするわけでもなくじっと通路の真ん中に立っていました。

私は、女性の背中を見送って、
エスカレーターで5階に上っていきました。

5階に到着した瞬間、私は言葉を失いました。
ついさっきまで確実に4階にいたはずの赤いジャケットの女性が5階にいたのです。
女性の背中を見送ってエスカレーターに乗ったのに、抜かれたわけがありません。

ゾゾゾと全身に寒気が走りました。
あの人は生きている人じゃない、そう確信しました。

こんな明るくて人が多い家電量販店に幽霊がいるなんて。
私はフロアをぐるっと回り、その足で下りエスカレーターに乗りました。
もうホテルに戻ろう、そう思ったのです。

エスカレーターで1階まで下って路地に出ました。
すっかり日も暮れていたので、
タクシーでホテルまで帰ろうと思いました。

けれど、タクシーが全然捕まりませんでした。
空車のタクシーは通るのに素通りされるばかりで、
ようやく止まってくれた一台も、
一度は後部座席を開けながら、
私が乗り込もうとすると、
いきなりドアを閉められました。
気分が悪いにもほどがありましたが、
仕方なくホテルまで歩いて帰ると、
友達が心配して待ってくれていました。
遅くなったことを謝って私達はホテルのレストランに夕飯を食べに行きました。
友達を不安にさせたくなくて、
赤いジャケットの女性の話はしないでおきました。

部屋に戻って、
友達がシャワーを浴びている間に、
スマホで調べてみると、
ビックカメラがある場所で、
昔大勢の人が亡くなっていたことがわかりました。
千日デパート火災。
118名が死亡したというビル火災史上最悪の大惨事が起きた場所にビックカメラは建っていたのです。
ネットには、あの場所で体験した、
数多くの心霊現象が投稿されていました。
私が、ビックカメラで見かけたあの女性も、
千日デパート火災で亡くなった人だったのかもしれません。

その時、友達が、シャワーを浴び終えて浴室からタオルで髪を拭きながら出てきました。
友達は、怪訝そうに部屋を見回しています。
「どうしたの?」
「・・・ねえ、なんか焦げくさくない?」

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