【怖い話】2月14日 バレンタインデー

これは僕の高校の同級生のWくんがバレンタインデーに体験した怖い話です。

2月14日の夜、Wくんから一枚の画像が送られてきました。
ギフト包装された小箱の画像でした。
時期的に、バレンタインデーにもらったチョコレートに間違いありません。

僕もWくんも高校のクラスではパッとしない存在で、今まで女子からチョコなんてもらったことがありません。
Wくんが僕より先にチョコをもらったことを自慢してきたのかと思って、少しムッとしていると、電話がかかってきました。

「なに、誰からもらったの?」
僕がつっけんどんに言うと、「それがさ・・・」とWくんが事の経緯を話し始めました。
それは僕が想像していたようなハッピーなバレンタインの話ではありませんでした。

今日、Wくんは、夜9時頃に部活動を終え、高校から駅に向かう道を歩いていたそうです。
すると、突然、女の人がWくんの真横に現れました。

「もらって、チョコ」

そう言って、女の人はギフト包装された小箱をWくんに差し出してきました。
あまりに自然な感じに、知り合いかと思ってWくんは女の人の顔を確認しましたが、全く知らない女の人だったといいます。
20代にも30代にも見える、黒髪のこれといった特徴のない普通の女の人だったそうです。
いくらWくんが今まで女子からチョコをもらったことがないからと言って、知りもしない人がチョコをいきなり渡そうとしてきたことに感じたのは、嬉しさより気味の悪さでした。
Wくんが無視して歩いていると、女の人はぴったり横についてきたそうです。

「もらって、チョコ」

女性は繰り返しWくんにチョコを渡そうとしてきますが、声のトーンは抑揚も何の感情もこもってない言い方で、Wくんはそれが余計に怖かったそうです。
返事をしたらダメだと思い、小走りに通りの反対側に逃げたといいます。

「ん?だったら、誰にもらったの、そのチョコ」
僕はWくんの話をそこまで聞き、疑問を口に出しました。
「そこなんだよ!俺が言いたいのは」

Wくんが自宅に帰ってきて、リュックを開けると、中に小箱が入っていたのだそうです。
間違いなく、通りでいきなり女性が渡そうとしてきたチョコの小箱だといいます。

「カバンを開けてもないし、どうやって中に入れたのかわかんないけど、気持ち悪くてさ。どうしようこれ?」
「すぐ捨てた方がいいよ」
僕は迷わず言いました。

「こんな最低なはじめてのバレンタインあるか?」
Wくんの体験は、不可解で奇妙な出来事として、高校の仲間うちでしばらくネタになりました。

でも、話はそれで終わりではなかったのです。

しばらくして、Wくんが、駅の階段から転落して足の骨を骨折する怪我をしたのです。
入院先の病院にお見舞いにいくとWくんの様子が変でした。
何かに怯えているようでした。
事情を聞くと、警察が防犯カメラを調べてWくんが自分でつまづいて階段を転落したのがわかったそうなのですが、Wくんは転げ落ちる寸前、後ろから確かに声を聞いたのだそうです。

「どうしてお返しくれないの」

その声は、間違いなくバレンタインの時にチョコを渡してきた女の人だったとWくんはいいます。

奇しくもWくんが怪我をしたのは3月14日。

Wくんがバレンタインに遭遇した女の人はこの世のモノではないいわくつきの存在だったのかもしれません。

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