ハウステンボスの怖い話

 

ハウステンボスは長崎県佐世保市にあるテーマパーク。東京ディズニーリゾートの1.5倍の広大な敷地にオランダの街並みや宮殿を再現していて、昨今ではイルミネーションに力を入れ、若者から家族連れまで多くの観光客が訪れている。

これは私が女友達4人でハウステンボスに遊びに行った時に体験した怖い話だ。

当日はあいにくの小雨。
長崎は雨が多いと聞いていたので、ある程度覚悟していたけど、せっかくなら晴れて欲しかった。
私たちの一番の目当てはもちろんイルミネーション。
ちょうどプロジェクションマッピングのショーも開催されていて、それも必ず見ようと話していた。

ハウステンボスは、テーマごとに街が区分けされていて、それぞれにアトラクションや見どころがある。
色々なアトラクションに乗ったり、食べ歩きしながら過ごしているとあっという間に日が暮れ始めた。
雨は止んでいたけど、空気は湿っていた。

19時過ぎ、プロジェクトマッピングのショーを見に行くため、パレスハウステンボスに移動を始めた。
パレスハウステンボスはオランダの宮殿を再現した建物で園内の一番奥にある。
大勢のお客さんが列になってずらずらとパレスハウステンボスに向かっていく。
到着した時には、人だかりができていた。

ショーが始まるまで時間があったのでお手洗いに行っておこうと思い、私はパレスハウステンボス内にあるお手洗いに行った。
戻ってくると、ショーの観客はさらに増えていて、友達の行方がわからなくなってしまった。
仕方なく、1人に電話すると、すぐに電話がつながった。
「ごめん。どこ?」
電話越しに、ざわざわとした人の声が聞こえた。
「手あげてくれない?」
そう言うと、人だかりの中から腕がひょこっと上がった。
「今いくね」
電話を切り、人垣を掻き分けて手があがった場所を目指す。
けど、手があがった場所についても、友達の姿はなかった。
周りを見回してもいない。
別の人がたまたま手を上げたのを勘違いしてしまったのだろうか。
再び、今度は別の子に電話をかけた。
「ごめん。もう一回手あげて」
周りを見渡す。
手があがらない。
「もしもし?」
遠くの方で手が上がった。
手があがったのは、人だかりの後ろの方に広がる雑木林の中だった。
せっかく場所取りをしたのに、なんで離れてしまったの不思議だった。
ひとまず人垣を抜けて、手があがった方を目指した。
雑木林の方から3人が手招きしているのが見えた。
私は小走りで3人の方に向かった。
その時、誰かに肩をつかまれた。
「どこいくの?」
友達の1人だった。
「あんまり遅いからトイレ見に行ったんだよ?」
私はわけがわからず雑木林の方に向き直った。
手招きしていた3人の姿は忽然と消えていた。

合流して話を聞いたら、
誰も私からの電話を受けていなかった。
私が見た3人の姿はなんだったのか。

そんな奇妙な出来事があったせいで、プロジェクトマッピングもイルミネーションもいまいち頭に入ってこず、うわの空だった。

広い園内を歩いて帰るのは大変なので、園内の運河を流れる遊覧船に乗ってエントランスまで戻ることにした。
小型船の風に吹かれながら、ライトアップされたハウステンボスの街並みを眺めていると、運河に架けられた橋の上に立つ人影が目に留まった。
人影は私達が乗った遊覧船をジッと見下ろしている。
遊覧船がグーッと橋に近づいていき、私はギョっとした。
橋から見下ろす4つの人影。
それはまぎれもなく私達4人自身だったのだ。
他の3人は橋の上の人影に気がついていなかった。
私は凍りついたように人影を見つめた。
遊覧船が橋の下に入っていく瞬間、橋の上の私達は下を覗き込み、ニタリと笑った。
橋を抜けて振り返ると、人影はいなくなっていた。

その後、何か恐ろしい体験をしたということはなかった。
あれはいったいなんだったのか、それはいまでもわからない。

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