【怖い話】【心霊】第156話「江の島の怖い話」

2017/10/16

 

江の島は神奈川県の湘南海岸沿いにある島だ。江の島大橋で向かい側の湘南海岸と繋がっていて、アクセスの良さから県内有数の観光地となっている。2020年の東京オリンピックの、セーリング競技の開催場所にも選ばれている。
江ノ島神社に向かう参拝路にはおみやげ屋が並び、山の上には、サミュエルコッキング苑や、夜景がきれいな灯台もある。
また、江の島は、古来宗教的な修業の場としても有名で、修業に使われていた岩屋があったり、修業僧の逸話が残っていたりする。
そんな江の島で、僕が体験した怖い話・・・。

僕は、カメラが趣味で、時々フラりと一人で撮影旅行に行ったりする。
大学2年生の時、旅行の道中に、江の島に立ち寄った。
小さい島だけど、観光客が多くて活気があったし、景勝地として有名だったので撮影ポイントも多かった。
一巡りしてから、カフェで写真データを確認した。
ふと、一枚の写真に目が留まった。
神社の鳥居の前を撮った写真。
大勢の観光客が映り込んでいる中、僕の目は、ある男性に釘付けになった。
そこにいるはずのない人物・・・。
3年前に死んだ高校のクラスメートだった。
間違えようがなく、彼だった。
他人の空似だろうか。
いや、そうとは思えない・・・。
彼は高校2年の時に自殺した。
あの有名な青木ヶ原の樹海に行くと遺書を残して。
遺体はいまだに発見されていないが死んだことに疑いはないとみんな思っている。彼の家族も諦めていた。
僕が知る限りイジメや受験など直接的な自殺の原因があったわけではなかった。
ただ、生きている意味を見いだせず、死を選んだのではないかと、僕は思っていた。そんなところが彼にはあった。だから、彼が実は生きていたという可能性は低いと思った。
・・・写真に幽霊が映り込んだのだろうか。
けど、どうして江の島なんだ。
地元でも何でもないのに。
わからないことだらけだ。

僕は、再度、島を巡って撮影をした。
本当はもう島を出ようと思っていたけど、もう一度、死んだクラスメートに会えるのではないかと思った。
会ったからと言って何か伝えたいわけじゃなかった。
ここで何をやってるんだ、そう尋ねたかったのかもしれない。
自分でも動機はよくわからなかった。

島の奥の方に、修業僧が使っていた岩屋がある。そこで再び同級生の姿を見つけた。
僕は後を追った。彼は岩屋の奥にずんずん入っていく。
岩屋の中はジメッとしていた。ところどころ地下水がにじみ出していて、ポタポタと音を立てている。すべらないよう奥に進んでいった。彼の幽霊は、立入禁止のロープの奥に入っていった。
「おい!」
僕は幽霊に呼び掛けた。彼の幽霊はピタッと足を止めこちらを振り返った。
口をもごもごと動かして何か言っている。
唇を読もうとした。

お・・・に・・・のか

おまえ・・・に・・・のか

おまえも死にたいのか

そう読み取れた。僕はハッとして一歩あとずさった。
その時、ゴン!と大きな音がして、目の前にラグビーボールくらいの岩が落ちてきた。
・・・もしも後ろに下がっていなかったら頭に直撃していたかもしれない。
岩から視線を戻すと、同級生の姿はかき消えていた。

後日、江の島を調べていて知ったのだが、江の島の洞窟は富士風穴と繋がっているという伝説があるのだという。
それを知り、樹海で亡くなった同級生が江の島に現れたのに合点がいった。
彼は今でも樹海と江の島の間をさまよっているのかもしれない・・・。

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