【怖い話】バレンタインの秘薬 #281
これは、知り合いから聞いたバレンタインにまつわる怖い話。
事実なのかどうかはわからない・・・。
女子高生のBちゃんは、
バレンタインに、
想いを寄せている同級生のCくんに手作りチョコを渡そうと計画していた。
ネットでレシピを研究し、
近所の商店街にあるスーパーでチョコを大量に買った帰りのことだった。
歩いているうちに、包装紙を買うのを忘れていたことを思い出した。
たまたま、商店街の雑貨店の前を通ったので立ち寄ってみた。
今まで入ったことはなかったけど、店内はエスニックな雰囲気で、
象の置物や不思議なお香などが置いてあり、アジア系雑貨のお店のようだった。
バレンタイン向けの包装紙は売っていないか、そう思って引き返そうとした時、
Bちゃんの目にある商品が留まった。
黄金色の液体が入った小瓶に、『大切な人を振り向かせる薬』という説明があった。
・・・まさか、惚れ薬的なものなのだろうか。
・・・冗談だよね。
そう思いつつ、Bちゃんは小瓶を一つ買った。
チョコレート作りは順調に進んだ。
Bちゃんは、雑貨店で買った小瓶の蓋を開けてみた。
バニラエッセンスみたいな甘ったるい匂いがした。
・・・身体に害はないよね、きっと。
おまじない的な意味で、Bちゃんは数滴、
溶かしたチョコレートにかけた。
翌日のバレンタインデー。
Bちゃんは、Cくんに無事、チョコを渡すことができた。
その日から、Bちゃんの周囲で変わったことが起こり始めた。
自宅にBちゃん宛ての花束が届いたり、
Bちゃんの下駄箱にプレゼントが入っていたりした。
もしかしたらCくんだろうかと思ったけど、
Cくんの態度は前と変わらず、距離が縮まったような気はしない。
それにプレゼントとして送られたのは、
数万円はするブランドものの時計だった。
Cくんとは思えなかった。
一体、誰なんだろう・・・。
Bちゃんは、嬉しさよりも、ちょっと怖い気がした。
そうこうしているうちに、ホワイトデーになった。
Bちゃんは、Cくんからお返しがもらえるかドキドキしていて待っていた。
すると、昼休み、Cくんに話しかけられた。
「ちょっと放課後、話したいことがあるから残ってくれない?」
Bちゃんは、天にも上る気持ちだった。
もしかしたら、あの雑貨店で買った秘薬が効いたのかもしれない。
そして放課後。
誰もいない教室でBちゃんは、Cくんを待っていた。
そこにCくんがやってきた。
けど、Cくんはどこか浮かない顔をしていた。
「・・・話ってなに?」
「・・・あのさ、Bって、うちの親父と知り合い?」
「・・・え?」
思いもしない展開にBちゃんは唖然とするしかなかった。
もちろん知り合いのわけがない。
そう伝えると、
「最近、うちの親父がBの話ばっかりするんだ。学校でどうだ、とか。何が好きなのかとか」
・・・それを聞いて、Bちゃんは、ある可能性に思い立った。
「Cくん、私が贈ったチョコ食べてないの?」
「・・・あ、ごめん。親父が酒のつまみが欲しいっていうから、あげちゃった」
その時だった。
勢いよく教室のドアが開いて、50歳くらいのおじさんが入ってきた。
「・・・親父!?こんなところでなにやってんだよ」
「C。お前にBちゃんは渡さないぞ、絶対に!!」
そう言って、Cくんのお父さんはCくんにタックルした。
ウッとうめいてCくんはその場に倒れた。
Cくんの身体から床に赤黒い液体が広がっていった。
Cくんのお父さんの手には包丁が握られていた・・・。
幸いCくんは命を取り止めたけど、
BちゃんとCくんのお父さんは姿を消し、
今でも行方がわかっていないのだという。