これは、知り合いから聞いたバレンタインにまつわる怖い話。
事実なのかどうかはわからない・・・。
女子高生のBちゃんは、
バレンタインに、
想いを寄せている同級生のCくんに手作りチョコを渡そうと計画していた。
ネットでレシピを研究し、
近所の商店街にあるスーパーでチョコを大量に買った帰りのことだった。
歩いているうちに、包装紙を買うのを忘れていたことを思い出した。
たまたま、商店街の雑貨店の前を通ったので立ち寄ってみた。
今まで入ったことはなかったけど、店内はエスニックな雰囲気で、
象の置物や不思議なお香などが置いてあり、アジア系雑貨のお店のようだった。
バレンタイン向けの包装紙は売っていないか、そう思って引き返そうとした時、
Bちゃんの目にある商品が留まった。
黄金色の液体が入った小瓶に、『大切な人を振り向かせる薬』という説明があった。
・・・まさか、惚れ薬的なものなのだろうか。
・・・冗談だよね。
そう思いつつ、Bちゃんは小瓶を一つ買った。
チョコレート作りは順調に進んだ。
Bちゃんは、雑貨店で買った小瓶の蓋を開けてみた。
バニラエッセンスみたいな甘ったるい匂いがした。
・・・身体に害はないよね、きっと。
おまじない的な意味で、Bちゃんは数滴、
溶かしたチョコレートにかけた。
翌日のバレンタインデー。
Bちゃんは、Cくんに無事、チョコを渡すことができた。
その日から、Bちゃんの周囲で変わったことが起こり始めた。
自宅にBちゃん宛ての花束が届いたり、
Bちゃんの下駄箱にプレゼントが入っていたりした。
もしかしたらCくんだろうかと思ったけど、
Cくんの態度は前と変わらず、距離が縮まったような気はしない。
それにプレゼントとして送られたのは、
数万円はするブランドものの時計だった。
Cくんとは思えなかった。
一体、誰なんだろう・・・。
Bちゃんは、嬉しさよりも、ちょっと怖い気がした。
そうこうしているうちに、ホワイトデーになった。
Bちゃんは、Cくんからお返しがもらえるかドキドキしていて待っていた。
すると、昼休み、Cくんに話しかけられた。
「ちょっと放課後、話したいことがあるから残ってくれない?」
Bちゃんは、天にも上る気持ちだった。
もしかしたら、あの雑貨店で買った秘薬が効いたのかもしれない。
そして放課後。
誰もいない教室でBちゃんは、Cくんを待っていた。
そこにCくんがやってきた。
けど、Cくんはどこか浮かない顔をしていた。
「・・・話ってなに?」
「・・・あのさ、Bって、うちの親父と知り合い?」
「・・・え?」
思いもしない展開にBちゃんは唖然とするしかなかった。
もちろん知り合いのわけがない。
そう伝えると、
「最近、うちの親父がBの話ばっかりするんだ。学校でどうだ、とか。何が好きなのかとか」
・・・それを聞いて、Bちゃんは、ある可能性に思い立った。
「Cくん、私が贈ったチョコ食べてないの?」
「・・・あ、ごめん。親父が酒のつまみが欲しいっていうから、あげちゃった」
その時だった。
勢いよく教室のドアが開いて、50歳くらいのおじさんが入ってきた。
「・・・親父!?こんなところでなにやってんだよ」
「C。お前にBちゃんは渡さないぞ、絶対に!!」
そう言って、Cくんのお父さんはCくんにタックルした。
ウッとうめいてCくんはその場に倒れた。
Cくんの身体から床に赤黒い液体が広がっていった。
Cくんのお父さんの手には包丁が握られていた・・・。
幸いCくんは命を取り止めたけど、
BちゃんとCくんのお父さんは姿を消し、
今でも行方がわかっていないのだという。