【怖い話】イヤな場所
Yさんの彼女のS美さんには不思議な力がある。
ドライブ旅行していた時のことだ。
Yさんが車を運転していると、S美さんが「違う道からいかない?」と唐突に言った。
ナビは最短ルートをしめしているので、Tさんはわざわざ迂回する必要を感じなかったけど、S美さんがあまりにも嫌がるので道を変えた。
後で調べてみると、そのまま進んでいたら、有名な心霊スポットの前を通っていたとわかった。
また、YさんとS美さんが、2人で同棲するための物件を探していた時には、数軒目で条件的に理想の物件を見つけたのだけど、S美さんが「ここはイヤ」と渋って見送ることにした。
後で調べてみると、その物件は昔、凄惨な事件が起きた事故物件であることが判明した。
霊感能力というのだろうか。
それとも動物本能のようなものなのか。
S美さんはどうも、人が無念のうちに死んだような、いわくつきの場所が察知できるようなのだ。
そうわかってからというもの、Yさんは、 S美さんが拒否感を示す場所には寄りつかないように心がけていた。
「ここ通りたくない」
その日も、S美さんが、とある道に足を踏み入れた瞬間、強い拒否感を示した。
「けど、この道しかないよ?」
しかし、今回ばかりはYさんも譲れなかった。
「ムリ。絶対イヤ」
S美さんも譲らない。
その道の先には、一軒の住宅があった。
Yさんの実家だった。
2人は結婚挨拶に訪れていた。
その道はYさんの実家にしか通じていない。
なぜ、これほどS美さんが拒否感を示すのか、
Yさんは混乱するしかなかった。
その時、庭先にYさんの母親が出てきて、笑顔で2人に手を振った。
Yさんの父親は、Yさんが子供の頃に蒸発してしまい、Yさんは母一人に育ててもらった。
S美さんの拒否反応には、Yさんの父親の蒸発と何か関係があるのか、、、
母親の笑顔を見ているうち、Yさんは寒気を覚えたという。
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