富士スバルラインの怖い話

富士スバルラインは、中央道河口湖IC近くから始まり富士山五号目まで繋がっている有料道路だ。
富士登山に訪れる登山客や五号目を訪れる観光客に使われていて、神秘的な富士山の原生林や溶岩帯の中を走る山岳道路である。

Fさん夫婦は、ある年の夏、五号目観光に向かうため、富士スバルラインを利用した。
五号目までの全長は30km近い長い道のりなので、途中に休憩所がいくつかある。
四合目の大沢駐車場に車を停め、小休止することにした。
タイミングがよかったのか夫婦の車以外は一台もとまっていなかった。
その日は晴天で、眼下には、富士山の裾野に広がる樹海の雄大な景色が広がっていた。

2人が記念写真を取っていると、一台の赤いコンパクトカーが入ってきた。
運転席と助手席に座る大学生くらいの若者が見えた。
軽装なので、彼らも五号目観光に訪れたのだろう。
Fさん夫婦は再び撮影に戻り、満足いく写真が取れて、車に戻ろうとして、ハッと足を止めた。
さきほどの若者グループがちょうど車から降りてきて、休憩所に向かって歩いていたのだけど、Fさん夫婦が驚いて足を止めたのは、若者達の人数だった。
1、2、3、、、と数えていくと全部で8人グループだった。
一方彼らが乗ってきたコンパクトカーはどう見ても5人乗ったらいっぱいのサイズだ。
いったいどうやって8人もあの車に乗ってきたのか不思議で、Fさん夫婦は互いに顔を見合わせた。

「トランクのスペースでも使ったのかな」、「定員オーバーってまずいんじゃなかっけ」そんな話をしながらFさん夫婦は五号目に向かっていった。

五号目に着いて、記念写真を撮影して、小御嶽神社に参拝すると、お腹が減ってきたのでレストランで
食事をとることにした。
すると、四合目で会った若者グループがちょうど到着したところらしく、ぞろぞろとレストランに入ってくるのが見えた。

人数を数えてみると6人。
8人から2人減っていた。
キョトンとして、Fさん夫婦は顔を合わせた。
別行動しているだけだろうか。
さきほどの定員オーバーの件が心のどこかで引っかかっていて、若者グループが妙に気になってしまった。
楽しそうにメニューを選んでいて一見しておかしなところはなにもなかった。

Fさん夫婦はご飯を食べ終えると、お土産を見ることにした。
色々な富士山グッズをカゴの中に入れていると、ご飯を食べ終えた若者達がレストランから出てきた。

ところが、出てきたのは4人だけ。
また2人減っていた。
後から残りの2人が来るわけでもなく、はじめからその人数だったかのように4人はまっすぐお店を出ていった。

さすがに彼らの動向が気になったFさん夫婦はお土産選びもそこそこに若者達の動向を追うことにした。

お店を出た4人はその足で駐車場に向かい、車に乗り込むと、富士スバルラインを走って下山していった。

残りの4人はどうなったのか。
それとも、はじめから彼らは4人だけだったのか。

それは今も謎のままだという。

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