【怖い話】家族写真

 

これは私が小学校時代に体験した怖い話です。

4年生の時のクラスメイトにBちゃんという女の子がいました。
Bちゃんは、クラスではそれほど目立たないおとなしい子でした。
席が近くなった時に話すようになり、時々、私達は放課後一緒に過ごすようになりました。

ある時、Bちゃんが、「家に遊びにこない?」と誘ってくれました。
誰かを家に招くのははじめてらしく、Bちゃんは少し緊張しているように見えました。
私は軽い気持ちで「いいよ」と答え、その日、学校が終わると、私達は2人でBちゃんの家に向かいました。

Bちゃんの家は小学校から歩いて20分ほどのところにありました。
似たような住宅が建ち並んだうちの一軒がBちゃんの家でした。
私は当時、団地に住んでいたので、一軒家というだけでとても羨ましく思いました。

家の中は花の香りがしました。
家中掃除が行き届いていて、埃一つなさそうなくらいピカピカでした。
Bちゃんはリビングに私を通してくれました。
大型テレビとソファがあって、テレビドラマに出てくる一軒家のイメージぴったりという印象だったのを覚えています。
「いらっしゃい」
Bちゃんのお母さんがケーキと紅茶を持ってきてくれました。
とてもキレイな人で目元がBちゃんに似ています。

ケーキを食べながらも私はキョロキョロと家の中を見回しました。
自分の家にないものばかりでどれも物珍しく、見ているだけで楽しかったのです。

ふとキャビネットの上の写真立てに目が留まりました。
Bちゃんとお母さんとお父さんが並んで写った家族写真が、写真立てに入れられて、何枚も飾られていました。

けど・・・変なのです。
Bちゃんとお母さんは笑って写っているのに、お父さんだけ、水彩絵の具をこぼしてぐちゃぐちゃにかき混ぜたように顔が滲んでぼやけていました。
目も鼻も口も判別不能でした。
どの写真もそうでした。

明らかな悪意を感じる写真でした。
Bちゃんのご両親は離婚しているのかもしれない、子供ながらに私はそう考えました。
けど、いくら離婚しているからって、わざわざこんな奇妙な写真を飾るでしょうか。
「これはね、みんなでピクニックに行った時の写真」
Bちゃんは、お父さんの顔がぐちゃぐちゃの写真を手に取って、なんでもないことのように撮影した時の説明を私にしました。
そんなBちゃんを見ていると、ゾワゾワと肌が粟立つような気味の悪さがありました。

その時、ガチャリと玄関のドアが開く音がしました。
「あら、今日はお父さんが早く帰ってきたみたい」
Bちゃんのお母さんが言いました。
・・・お父さん?離婚したんじゃないの?
ワケがわからず突っ立っていると、スーツを着た男性がリビングに現れました。
Bちゃんのお父さんの顔を見て、私は悲鳴を上げました。
写真の通りの、絵の具をぐちゃぐちゃにかき混ぜたような顔がそこにありました。
目も鼻も口もない顔が溶けたのっぺらぼう。

・・・その後のことはよく覚えていません。
気づいたら自分の家でした。

その日以来、Bちゃんとは口をききませんでした。
向こうも私を避けているようでした。
アレは一体なんだったのでしょう。
私が見た幻だったのでしょうか。

いまだに答えはわかりません・・・。

#420

-怖い話