【怪談】七夕の呪い短冊
2018/07/07
みなさん今年の七夕にはどんな願いごとをしますか?
7月7日の七夕といえば、願い事を短冊に書いて笹に飾る風習が有名ですけど、そんな七夕に関する怪談を今日はお話させていただきます。
ある児童養護施設で起きた出来事です。
その施設では、毎年欠かさず、七夕になると、
子供たちに願い事を短冊に書かせて、笹に飾っていました。
Tさんというベテラン職員がいたのですが、
Tさんは職員の中でも、特に熱心に七夕の飾りに取り組んでいました。
温かい家庭環境に恵まれなかった子供逹でも、夢や希望を諦めて欲しくないという気持ちがTさんにはあったのです。
ところが、そんなTさんの気持ちをふみにじるような出来事が起きます。
笹に吊るされた短冊の願い事を読んでいたTさんは、恐ろしい願い事が書かれた短冊を見つけてしまいました。
『Tが、不幸になりますように』
Tさんは、呆気に取られました。
あまりにひどい内容すぎて、はじめは理解できませんでした。
すぐに他の職員も知るところとなり、
例えイタズラだとしても見過ごしたらいけないという話になりました。
施設の子供達を全員集め、
その短冊を書いたのは誰かとたずねました。
子供達は互いに顔を見合わせるだけで、
誰も名乗りでませんでした。
怒ったりしない、正直にいって欲しい。
そう伝えても変わりませんでした。
そこで、職員の人たちは、
子供達に、自分で書いた短冊を笹から取るように言いました。
短冊は一人一枚しか渡していないので、
自然と書き手が特定されるはずでした。
ところが、子供達全員が短冊を手元に戻しても、
Tさんを呪った短冊は笹に残ったままでした。
筆跡からいって、子供には間違いありません。
「こんな酷いことしたの誰なの!?名乗りでなさい!」
普段は温厚な職員の人も、さすがに声が大きくなりました。
「もういいわ。きっとそんな悪気はなかったんだろうから・・・」
逆に、場を取り繕ったのは Tさんでした。
傷ついていないといったら嘘ですが、
楽しいイベントを台無しにしたくないと、
Tさんは思ったのです。
Tさんの気遣いのおかげか、
その後は和やかな雰囲気に戻りました。
ところが、
その翌年の七夕にも、不吉な短冊が見つかったのです。
『 Tが、悲惨な死に方をしますように』
またしても、書いた人物は特定できませんでした。
よほど、自分を恨んでいる子供がいるのか、
Tさんは思い悩み、ノイローゼになってしまい、眠れなくなってしまいました。
そして、ある日、車で大きな自損事故を起こしてしまい、 Tさんは亡くなってしまいました。事故でひしゃげた車に閉じ込められた Tさんは、漏れたガソリンに引火した炎に焼かれ、目撃者の話では、断末魔の叫びがしばらく聞こえるほどの悲惨な死に様だったそうです。
Tさんの事故死で悲嘆に暮れた施設で、
子供達は部屋に集まっていました。
「まさか、こんなことになるなんてな」
「俺たちのせいじゃないだろ。勝手に事故ったんだから」
やはりTさんの短冊は施設の子供達のいやがらせだったのです。
生活態度を Tさんに注意され、逆恨みからやったことでした。
「うるさいババアがいなくなってよかったじゃないか」
「それもそうだな」
Tさんの想いもむなしく、子供達はただ冷酷で薄情なだけでした。
その翌年のことです。
もう七夕の笹飾りはやめようかと職員の間でも議論になったのですが、
最終的にはTさんの想いを繋いでいこうということで、
今年も開催されることになりました。
色とりどりの短冊が飾られた笹。
しかし、今年も不吉な短冊が発見されてしまいました。
「みんな、悲惨な死に方をしますように」
血のような赤い絵の具で書き殴られた短冊を見て一番驚いたのは、子供達でした。
自分達が書いたものではなかったからです。
その後、子供達の身に何が起きたのかは、また別のお話・・・。
ただ、その児童養護施設は今はもう存在していないとだけはお伝えしておきます。
・・・さて、願い事は決まりましたか?
こんな恐ろしいこともあるので、七夕の短冊には、
不用意な気持ちで願いは書かない方がいいかもしれませんよ。
さあ、今年はどんな不吉な願いを叶えましょうか。
七夕の呪い短冊。
もしかしたら、今年はみなさんのもとに行かせていただくかもしれません。
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