【怖い話】【心霊】鎌倉の廃寺 #196

2017/09/11

 

これは鎌倉に遊びに行った時に体験した怖い話・・・。

私は同時付き合っていた彼氏と、鎌倉花火大会を見にきていて、花火大会の前にお寺巡りをしようという話になった。
鎌倉には数えきれないくらい神社仏閣があって、有名な鶴岡八幡宮から、住宅街の中を抜けてたどり着く山寺もあったりする。

花火大会があるので有名なスポットはどこも混んでいて、私たちは人込みを避けるように山の上にあるお寺に向かった。
そろそろ花火を見に行こうかという頃には、辺りは夕暮れに染まりはじめていた。
歩き通しで足はパンパンだった。
彼氏が、携帯で車を停めている鎌倉駅近くの駐車場までの地図を確認して、私たちは帰り始めた。
お寺が山の中にあったので、帰りは坂道を下っていった。
ところが、いくら経っても、大通りに出ない。
「ねえ、道間違えてない?」
「いや、地図はこっちになってる」
彼が大丈夫というのだからと、さらにしばらく進んだけど、山裾の住宅地から一向に出なかった。
「認めなよ、迷ったんでしょ?」
私は痺れを切らして言った。
「ごめん」
彼から携帯を奪い取り、自分で地図を確認することにした。
と言っても私だって方向感覚があるわけではない。
山を降りているはずなのに、なぜか目指す通りに出られない。
完全に自分達がいる位置を見失っていた。
花火大会がもうすぐ始まるという頃、目の前にお寺が見えてきた。
これほどわかりやすい目印があれば、位置はわかるはずだ。
お寺の名前を見ようと、入口に向かった。
ところがお寺の名前が墨で書かれた板が、腐ってボロボロになっていて読めなかった。辺りにもお寺の名前がわかるような看板がない。
誰かに聞こうにも人がいない。
私たちはお寺の敷地内に入った。
本殿は屋根瓦が崩れ落ち、観音開きの扉の片方が傾いていた。
どうやら廃寺のようだ。
急いでなければ興味深いスポットの発見に喜んだかもしれないが、疲れていて早く帰りたかった。
本殿の横は藪が伸び放題になっていて、草の間にいくつも苔むした石仏が転がっていた。
・・・とても薄気味悪かった。
早くお寺を離れようと引き返すと、本殿に向けて手を合わせている割烹着姿のおばあちゃんがいた。天の助けだ。
「あの、道に迷ってしまって。駅はどちらになりますか?」
おばあちゃんは返事をしてくれず、私の方を見ただけだった。
シワだらけの顔には何の表情も浮かんでおらず、白っぽく色がない目をしていた。
おばあちゃんは、スッと石仏がある藪の方を指差した。
「あっちですか?でも、道が・・・」
「おーい、道があったよ」
彼氏が藪の方から走ってくる。
では、あちらが本当に駅の方角なのか。
おばあちゃんにお礼を言って、藪の中を進む道を進み始めた時だった。

打ち上げ花火が上がった。
まったく反対の方角から・・・。
花火大会の会場の由比ヶ浜は、車を停めた駐車場のさらにずっと先だ。
振り返るとおばあちゃんは、忽然と消えていた。

遠目に花火を見ながら、ようやく駐車場についた頃には、花火は終わってしまっていた。

後日、 Googleマップやストリートビューで徹底的に探したけど、
私たちが迷い込んだ廃寺を鎌倉で見つけることはできなかった。
あの建物は一体、なんだったのか。
そして、あのおばあちゃんが指した方角に進んでいたら、
一体どこに私たちは行っていたのか、考えると寒気がする・・・。

-怖い話, 神奈川