【怖い話】【心霊】第167話「幽霊坂」

2017/10/16

 

近所に、幽霊坂と呼ばれている坂がある。
その名の通り、幽霊が出ると噂されている坂だ。
けど、不思議なことに、色んな噂は聞くけど、実際に怖い思いをしたり、幽霊を目撃した人がいるわけではない。噂が一人歩きしているような感じだった。
どういう坂かというと、左右に繁った雑木林が屋根のように覆い被さっていて、日中でも
日が差さない。コンクリートで固められた地面には、ところどころに苔が生えている。一年中暗くじめじめして、確かに何か出てきてもおかしくない雰囲気ではあった。
危ないので幽霊坂を通らないよう先生からは言われていたけど、学校への一番の近道だったので、幽霊坂を使っている生徒は多かった。
僕も遅刻しそうになった時には幽霊坂を通って中学校へ行っていた。
今日は忘れ物を取りに家に帰ったので、幽霊坂から行くことにした。
本当は使いたくないんだけど、しょうがない。
今日は運悪く他に歩いている人が一人もいなかった。
朝なのに夜のように暗い坂道に僕は一人きりだった。
心細くて、小走りになった。
と、前方に大人の女性が歩いているのが見えた。
あれ?あんな人、さっきまでいたっけ?
不思議に思っているうちに、僕と女性との距離はじょじょに縮まっていく。
坂道には女性のハイヒールの音と、僕の靴音だけが響いていた。
僕は女性を追い抜いた。なんとなく女性の方を見ない方がいいような気がしたので、下を俯いていた。
すると、突然、ピタッとハイヒールの音が止んだ。
あれ、と思い振り返ると、女性は消えていた。追い抜いてからほんの数秒。隠れる場所などどこにもない。
背筋がゾッとした。
ついに見てしまった!僕は幽霊坂の怪奇現象を実際に体験したのだ。早くクラスメイトに教えないと。
僕は中学校まで走った。
昇降口で靴を脱ぎ捨て、教室のドアを開け放った。
「また幽霊坂に出たって!」
クラスメイトからの第一声。それを聞いた瞬間、僕はどうして自分がこんなに急いでいたのかわからなくなった。なにか慌てる理由があった気がしたのだけど・・・。
何か引っかかるけど、それが何なのかわからない。頭に靄がかかったような感じだ。
「今度は何があったの?」
僕はクラスメイトに聞いた。
「ハイヒールを履いた女の人を追い抜いた瞬間、パッと消えてたんだって」
「誰が見たの?」
「わからない。隣のクラスのヤツも人から聞いたって」
「またかよ!」
また噂だけ。幽霊坂で実際に幽霊を目撃した人はいない。今後もそれは続くだろう。そんな気がした・・・。

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