長野のペンションの怖い話

 

先日、彼女と長野県白馬村に1泊2日でスノーボードに行った時のことです。

スノボを満喫した後、日が落ちると僕達は宿泊先のペンションに向かいました。

白馬岳の麓にあるペンションは、洋館風の二階建てで、ロビーには暖炉がありました。

部屋はツインルームで、全体的に手入れがしっかりされていて清潔な感じで、彼女も満足してくれました。

荷物を置いて一息ついていると、彼女がふいに「あれ?」と声をあげました。
彼女はカーテンを開けて窓の外を覗いていました。
「どうしたの?」と聞くと、彼女は窓ガラスを指差し、「これ見て」と言います。
彼女が指差した先を視線で追うと、窓ガラスの外にちょこんと小さな雪だるまが乗っていました。
拳の大きさくらいの雪を重ねただけの小さな雪だるまです。
誰かが作って置いたのかなと思いましたが、僕達が泊まる部屋は2階です。
ペンションのスタッフさんがサービスで作って飾ってくれたのかな、と2人で首を傾げました。

夕食の時、スタッフさんに雪だるまについて尋ねてみましたが、スタッフさんは、ペンションでそういうサービスをしたりはしていないといいます。
掃除担当の人が作ったのかもしれませんねとその場ではそういう話に落ち着きました。

夕食後、部屋に戻ると不思議なことに雪だるまはなくなっていました。
「溶けてなくなっちゃったのかな?」
彼女はそう言いましたが、ほんの1時間たらずの夕食の間に一気に溶けたりするだろうかと僕は思いました。
なんだか嫌なモヤモヤ感を覚えましたが、せっかくきた旅行を台無しにしたくなくて僕は話題を変えました。

12時過ぎ。僕と彼女はそれぞれのベッドに入りました。部屋が寒いと彼女がいうので暖房の温度をかなり上げて僕は眠りにつきました。

部屋の温度を上げすぎたせいか、その夜は、なんだか寝つきが悪く、深夜何回も目が覚めました。
スノボの疲れのせいか、なんだか身体が重たくて仕方ありませんでした。
お腹の上に漬物石でも乗っているような感じでした。
まどろんでは目を覚ますを繰り返し、気づけば朝でした。

「大丈夫?」彼女が僕の顔をのぞきこんでいました。
「うなされてたよ」
そんな自覚がなかったので驚きました。
シーツをめくってベッドから降りようとして「うわっ」と思わず声が出ました。
ベッドのシーツがぐっちょり濡れてシミになっていたのです。
ちょうど足元からお腹のあたりにかけてまで。
濡れた場所をたどっていくと窓へと続いていました。
水濡れは窓から僕のお腹まで、何かが通った跡のように続いていました。
僕は彼女と顔を見合わせました。
彼女は引きつったような表情をしていました。
2人とも同じことを考えていました。
雪だるま・・・。
窓の外にあった雪だるまが、部屋の中に侵入してきて僕のベッドにあがりこんだ。
そんなイメージが浮かび背中を冷たい汗が流れました。

部屋を暖かくしていたから雪だるまは溶けてしまったけど、
もし暖房の温度を必要以上にあげていなかったら、何が起きていたのでしょうか。
想像すると怖くなりました。

ペンションを後にする時、
駐車場の車のボンネットに小さな雪だるまが置かれていました。
僕は、気味が悪くて、さっと手で払い雪だるまを崩すと、そそくさと車のエンジンをかけました。

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