【怖い話】【心霊】第154話「産声」

仲良しだったKちゃんが、突然消えた。
高校にも登校せず、携帯も繋がらないし、バイト先も辞めていた。
家にも帰っていないようだ。
Kちゃんは、家族と折り合いが悪く、しょっちゅう家出を繰り返していたから、誰も心配してないみたいだった。
けど、私にまで連絡をしないのは、ちょっと変だ。
心当たりは全て当たったけど、手がかりすらなかった。

それから、しばらく経って・・・。
繁華街で偶然、Kちゃんらしき人を見かけた。マスクで顔を隠していたけど、私にはわかった。
「Kちゃん?」
呼び掛けると、向こうはハッとしたように逃げていった。
「待って」
私は追った。なんで逃げるのか理解できなかった。私達、親友だったじゃんじゃないの。

Kちゃんは、路地裏にある雑居ビルの非常階段を上り、建物の中に逃げ込んだ。
Kちゃんが入っていったドアから私も中に入った。
倒産した会社のオフィスのようで、デスクやキャビネットが残されたままになっていた。あちこちにコンビニ弁当や紙パックのジュースのゴミが散らばっている。
Kちゃんは、こんなところで、しばらく暮らしていたのだろうか。

奥からすすり泣きが聞こえた。
Kちゃんはデスクに突っ伏して泣いていた。「Kちゃん?」
「来ないで!」
「探してたんだよ」
「来ないでよ!」
振り返ったKちゃんを見て私は驚いた。
ぽっこりと膨らんだお腹。
見れば明らかだった。
友人の私も心配していた事態にKちゃんは直面していた。
「相談してくれればよかったのに」
「そうじゃない・・・そうじゃないの」
Kちゃんは、違う違うと頭を振った。
「誰ともHなんてしてない!」
・・・唖然とした。妊娠しているようにしか見えないけど、Kちゃんが言っていることが正しいなら、何かの病気に違いない。
「病院いこ!救急車呼ぶ」
私はスマホを取り出した。
その時、Kちゃんの身体が急に痙攣しだした。バネ仕掛けのように、繰り返し跳ねている。私一人の力では押さえられない。
口から泡を吹いている。
電話している余裕はない。
通りにいる人に助けを求めよう。
そう思って、入り口を目指した時だった。

ボォーー ボォーー

船の汽笛のような音が背後からした。
振り返ると、Kちゃんの下腹部が血で真っ赤に染まっていた。

産まれた・・・?
今のは、もしや・・・産声・・・?
一体何が産まれたの?

私は、その場から動けなくなった。
その時、何かが私のスカートの裾をギュッとつかんだ。

マ・・・マ・・・

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