第102話「落し物」

「おとしましたよ」
女性の声に振り返った。だけど、誰もいない。
気のせいかな・・・。そう思って、しばらく歩くと、再び、
「おとしましたよ」
振り返るがやはり誰もいない。
暗い夜道を歩いていた時だったので、私は怖くなって、走って逃げた。

足が痛くなるまで走って、街灯の下で息を整えた。アレはなんだったのか、ついに心霊体験をしてしまったのかと胸がドキドキした。

その時だった。
「おとしましたよ」
振り返ると青白い顔をした女性が立っていた。
ひっ、と声が出た。
女性は、手に大きな丸い物を抱えている・・・。
それは、私の生首だった・・・。
目を閉じて、口元からは赤い血が流れている。 そうだ・・・私は事故にあって死んだんだった・・・。
「おとしましたよ」
青白い顔をした女性の幽霊が言う。
「・・・ありがとう」
私は、女性から自分の生首を受け取って、かつて頭があった場所に置いた。

-ショートホラー