旧佐敷トンネルの怖い話

旧佐敷トンネルは熊本県芦北町にある煉瓦造りの風情あるトンネルであるが、熊本一の最恐心霊スポットともいわれている。
最近も、肝試しにいった若者の1人が誰もいないのに急に足を引っ張られる動画がTwitterで拡散され話題になっている。
建設中に落盤事故があったともいわれていて、入口にはお地蔵様が祀られている。

これは、そんな旧佐敷トンネルでKさんが体験した怖い話。

Kさんが旧佐敷トンネルにいったのは20年以上前の話で、まだナビがそれほど普及していなかった頃、友達3人とドライブをしていて道に迷ってしまい、旧佐敷トンネルにさしかかったのだという。
心霊スポットというのは知らなかったけど、夜で辺りは暗く、車通りもなかったので、それだけでも十分に怖かった。
トンネル内に入っていくと、開けていた窓から夏だというのに真冬のような冷気が入り込んできた。
天井から水が滴る音がピチョンピチョンと響いて薄気味悪い。
半ばくらいまで進んだ時、後部座先の1人が「止めて」と言ったので、Kさんはブレーキを踏んだ。
車がとまると後部座席の友人はおもむろに車を降りてなぜかトンネルを引き返していった。
「どうした」窓から顔を出しKさん達残りのメンバーが呼びかけても、返事もせずに歩いていく。
しかも足取りが酔っているみたいにフラフラしていておかしかった。
後部座席のもう1人と、助手席に座っていた友人が2人で、後を追った。
Kさんは他の車が来る可能性を考えて、運転席に残って、サイドミラーで様子を確認した。
フラフラと歩く友人に追いついた2人は、看護するようにトンネルの側道に寄せている。
ところが、次の瞬間、驚くべきことが起きた。
Kさんが目を離した一瞬のうちに、サイドミラーから3人の姿が消えていたのだ。
慌てて振り返って直接トンネルの来た道を見たけど、3人ともいなかった。
神隠しにあったように消えてしまった。
Kさんは、車を飛び出して、3人が消えた方向へ駆けて行った。
名前を呼びかけても、トンネルに反響するだけで、返事は一向になかった。
ゾワゾワと背筋に寒気が走った。
なにか得体の知れないものたちがトンネルの両サイドからKさんを囲むように迫っているような気配があった。
身体中がガクガクと震え、喉元まで悲鳴が出かかった、その時、、、

K・・・Kっ!

呼びかける声にハッとした。
気がつくと目の前にトンネルの出口があった。
車の外にいたはずなのに、ハンドルを握って運転をしていた。すごいスピードが出ている。
トンネルを抜けると急いで側道に車を寄せて止めた。
あやうく大事故になるところだった。
友人は3人とも戻っていた。
聞くと、トンネル内を走っていたらKさんの様子がおかしくなり、スピードを上げて蛇行運転を始めたのだという。
Kさんが見ていたのは夢だったのだろうか。
けど、眠気などまるでなかった。
旧佐敷トンネルに巣食う怪異の影響を受けたのではないかとKさんは考えているそうだ。

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