引っ越しのバイトの怖い話。荷物の中身は・・・。 #103

2017/10/06

 

これは学生の頃、引っ越しのアルバイトをしていて体験した怖い話です。

引っ越し作業は社員の人と二人一組で行います。
バイトは社員の人の指示を受け荷物をトラックに次々と積んでいきます。
その日は、雨がじとじと降っていて、朝から気持ちが重かったのを覚えています。
1軒目は、これから同棲を始めるカップルで幸せそうな二人の雰囲気のおかげで、和気藹々と終わりました。
ところが午後から作業から始まった2軒目は、打って変わった雰囲気でした。

あばら家のような平屋から、引っ越す先は都内のマンションになっていました。
家に入ってみると、どんよりとした重たい空気が漂っていました。
外は爽やかな秋晴れなのに、家の中は異様に暗く気が滅入る感じでした。
家主の人がまた変わっていました。
40代くらいの男性で、虚ろな目をしていて、髪もボサボサに乱れていました。
何日も寝ていないかのように目が充血していて、どことなく普通じゃない雰囲気の人でした。
荷物について質問をしても、ボソッと聞こえるか聞こえないかの声の返事でした。

作業が始まり、何個目かのダンボールを運んでいた時でした。

ガサガサガサ・・・。

ダンボールの中で何かが動いた気がしました。
生き物?
ペットをダンボールに詰めているのかと思いました。

ガサガサガサ・・・。
中で何かが確実に動いていました。

けど、奇妙なことに、ダンボールは、とても軽いのです。
「これ割れ物とか入ってますか?」
僕は、さりげなくお客さんに尋ねました。
「・・・いえ」
お客さんは、こちらを見もしないでボソリとつぶやきました。
めんどうごとに関わりたくないと思い、黙ってトラックに積んでしまおうとも思いましたが、何かあった時に責任を取らされたくないと思い、僕はお客さんが見ていないところでダンボールを開けてみました・・・。

けど・・・中身はからっぽでした。
僕は混乱してしまいました。と同時に背中を寒気が走りました。
確実に何か動くものが入っていたはずなのに、からっぽだったのです。

「あけちゃいましたねぇ」
僕は声に驚いて振り返りました。
いつの間にか、お客さんが立っていました。
薄く笑みを浮かべていました。目には残酷な光が宿っているようにみえました。
「ちゃんとみてくださいよ・・・面倒」
お客さんは僕にそう言い残し、戻っていきました。。

その後、作業は滞りなく終わりました。
ところが、それ以来、最近、僕の身の周りでおかしなことが頻発するようになりました。
冷蔵庫の中身がなくなる・・・。家のモノの配置が変わっている・・・。
部屋からおかしな臭いがする・・・。夜中に何かが家の中をうろつく気配がする・・・。

僕は、一体、何を連れてきてしまったのでしょうか・・・。

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