【怖い話】【怪談】座ったら死ぬ椅子

イギリスにはバズビー・チェアという有名な椅子がある。
バズビーという死刑囚が愛用していた肘掛け椅子で、この椅子に座った人間は"死ぬ"と言われている。
噂が広まり度胸試しで座った60人以上が亡くなったともいわれている。

ここ日本でも似たような怖い話がある。
中学生のBくんが体験した話だ。

Bくんが通っていた中学校には呪われた椅子という噂話があった。
かつて、その中学校には、クラス中からいじめられていた男子生徒がいた。
男子生徒は9/1の始業式の朝、自分の席を踏み台に照明にロープを渡して、首を吊り自殺したのだといわれている。
それ以来、毎年9/1に男子生徒が自殺に使った椅子に座ると呪われるといわれるようになった。
いわくつきの椅子なので、学校側は一度撤去したそうなのだが、数年後、事情を知らない用務員さんが倉庫から問題の机と椅子を出して教室に置いてしまった。
今ではどの教室のどの席が呪われた席なのか誰にもわからないという。
呪いのロシアンルーレットだ。
今まで9/1にその席に座ってしまった生徒は事故にあったり、気が狂ったり、自殺したという噂だった。
2学期に良くないことが起こると、呪われた席に座ったからだと言われるのが、その中学の伝統となっていた。

もちろんBくんも、座ると呪われる椅子の噂は聞いていて、だから一学期末の席替えは、少し抵抗があった。
替わった席で2学期初日の9/1を迎えることになるからだ。
くじ引きで引いた真ん中の席につくなり、Bくんは言い知れぬ不安を感じた。
言葉では説明がしづらいけど、肩が重くて、空気がその席だけ違うようなそんな感じだ。
Bくんは自分が当たりを引いてしまったのだと思った。
おそらく、この席が問題の呪われた椅子なのだ。
そう思った瞬間、座っているのが苦痛で仕方なくなった。
今すぐ立ち上がって席を交換したい。
授業中、変な汗をかきっぱなしだった。

幸い、すぐに夏休みに入ったので、呪われた席に座らなくてすんだのだけど、Bくんは夏休みを楽しむどころではなかった。
休み明けの9/1になれば、あの席に座らなくてはならない。
頭の中は、ずっと呪われた席のことでいっぱいだった。

Bくんは、夏休みの間、何度も何度も考えてある結論を導き出し、9/1の朝、始業の2時間前、誰よりも早く登校した。
朝、自分の席を交換してしまおうと思ったのだ。
自分の代わりに誰かが不幸になるわけだが、背に腹はかえられない。
Bくんの心は追い詰められていた。

後方のドアを開けて教室に入ると、Bくんはギョッとした。
始業2時間前だというのに教室に自分より先に来ていた生徒がいた。
その男子生徒は、真ん中あたりの席に座っていた。
いや、あの席は、Bくんの席。
呪われた席だ。
Bくんの全身を寒気が走った。
このクラスでは見た記憶がない後ろ姿。
あの男子生徒は、もしや、、、。
その時、男子生徒が首をグーッと回転させ始めた。
まるで機械仕掛けの人形のような動きだった。
生きた人間の動き方ではなかった。
目をつむりたいし逃げ出したいのに、Bくんは金縛りにあったように固まり、男子生徒から目を逸らせなかった。
そして、振り返った男子生徒の目は、まるでガラス玉のように透明だった。

・・・はっきり覚えているのはそこまでだ。

気がつくと周りがガヤガヤしていた。
いつのまにか教室にクラスメイト達が登校していた。
夏休み明けで肌が小麦色に焼けている生徒が多い。
Bくんは自分の席に突っ伏して眠り込んでしまったらしい。
・・・ハッと息を飲んだ。
呪われた席にBくんは座ってしまっていたのだ・・・
恐怖が足元からゾクゾクとせりあげてくる。
どうして、あれほど気をつけていたのに、どうして・・・
Bくんはパニックから恐慌を起こし、教室を走って出て行った。
下駄箱で靴に履きかえぬまま表に飛び出し、校門を駆け抜け、そして学校の前を走る赤信号の幹線道路に飛び出し、突っ込んできたトラックにひかれた。

・・・呪われた椅子が今どのクラスの教室で使われているかは誰も知らないのだという。

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