昭和記念公園の怖い話

 

昭和記念公園は、旧立川飛行場跡地を整備して作られた、東京都立川市と昭島市にまたがる日本を代表する国営公園で、東京ドーム約40倍の敷地に広大な緑あふれる都会のオアシスとなっている。

僕は学生の頃、昭和記念公園で来場人数調査のアルバイトをしたことがある。
椅子に座って、来場者が前を通るたびカウンターを押すだけの簡単なアルバイトだ。
そこで、僕は奇妙な体験をした。

季節は初冬だったので、かなり肌寒かった。

午後4時くらいだったと思う。
空はうっすらと茜色に染まり出していた。
もうすぐ仕事も終わりと思い、気持ちを入れ換えた。

その時、一陣の風が吹いた。
と思ったら、今まで途切れなかった来場者の波が、ピタッと止んだ。
さっきまでのざわめきが嘘のような静寂が訪れた。
違和感を覚えるほどの変化だった。

トン、トン、トン・・・コロコロコロ・・

足元にサッカーボールが転がってきた。
足先でキャッチして、周りを見回す。
ボールを蹴った人の姿は見当たらなかった。
それどころか、見渡す限り人影がなかった。

一体、何が起こったのか?
世界で自分だけが取り残されたようなざわざわとした不安と恐怖が身体の中を這い上がってくる。

僕の背後からスッと影が伸びてきた。
小さな男の子だ。
サッカーボールの持ち主だろうか。
振り返ろうと思うのに、なぜか振り返ったらいけない気がした。
男の子の影はまったく動かなかった。

と、再び、サーッと風が吹きつけたと思ったら、親子連れが前を通りかかった。
僕は慌ててカウンターを押そうとして、ギョッとした。
さっきまで、3桁だったカウンターが、8459というデタラメな数字を指していた。

いつのまにか、後ろに立っていた男の子はいなくなっていて、結局、最後まで、サッカーボールの持ち主は現れなかった・・・。

あの一瞬、僕は別の世界に迷い込んでいたのではないかと思っている。

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