【怖い話】ホームビデオ

 

私の家は、なんでも動画に撮影する習慣がある。
父がカメラ好きということもあって、家族旅行や、誕生日などのイベントがあれば、必ずカメラを回している。
父の影響もあって、私や2つ下の弟もじぶんたちのiPhoneで撮影をしたりするようになった。

私が大学2年の時、
友達がレストランを貸し切って誕生日会を開いてくれて、弟がカメラを回した。
弟は父に似て撮影が好きなようで、
リポーターの真似をして、
私や友達たちにインタビューをして回っていた。

ところが、
普段ならすぐに撮影した素材を見せにくるのに、
いくら待っても弟は映像を見せにこなかった。
友達たちからも、あの時撮影した映像を見たいと声があったので、私は弟に話をすることにした。
「誕生日会の時の映像見れる?」
「・・・あぁ、あれさ、お蔵入りにしようかと思って」
「え?なんで?」
「いや、なんでっていうか」
弟の歯切れがどうにも悪かった。
映像自体はあるようなので、
私は食い下がって弟に映像を見せるよう言った。
「わかったよ・・・でも、見て後悔するなよ」
弟は、意味深なことを言って、iPhoneで誕生日会の動画を再生した。

弟が変なことを言うので構えてしまったけど、特に変わったところは見当たらなかった。
けど、はじめのうちだけだった。
5分ほど動画を見て、私は言葉を失った。
それを見た瞬間、両腕に鳥肌が立った。

ある瞬間から、動画の中の私の顔が私じゃなかったのだ。
身体は間違いなく私だけど、顔は見知らぬ老婆に変わっていた。
まるで、合成で私の顔の上に老婆をはめ込んだみたいだった。
私が歳をとった顔などでもなく、全くの別人だ。
ボサボサの白髪頭に、不揃いな黄色い歯。
見ているだけで、不快さと恐怖に襲われた。

「消した方がいいよね?」
弟が私の顔をうかがっていった。
「今すぐ消して」
弟は私が見ている前で、誕生日の動画を全て削除した。

それ以降、何か恐ろしい体験をしたとかはない。
けど、正体不明の恐ろしさはいまだに消えることがない。
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