【怖い話】【心霊】第153話「トイレの落書き」
2017/10/20
俺が通っている高校の体育館裏に、あまり使われていないトイレがある。人知れず用を足したい時や、ゆっくり一人になりたい時に重宝していた。ただ、昔から改装されていないらしく、臭いし汚いしという欠点もあった。
俺が使っているのは、いつも一番奥の個室なのだけど、その個室のドアには落書きがあった。便座に座るとちょうど目の高さに落書きはあった。
油性マジックで書かれた棒人間。
誰が書いたのかはわからないけど、ずいぶん前からあるような感じだった。
ある時、奇妙なことに気づいた。
この前見たときから、棒人間のポーズが変わった気がしたのだ。
見間違えだろうか。
けど、次にトイレに来たときに違和感は確信に変わった。はっきり棒人間のポーズが変わっていたのだ。
この前見たときは両手を身体の横に出していたけど、今は片手を背中の後ろに回していた。
誰かがわざわざ書き直したのだろうか。
いや、そもそも油性マジックがそんな簡単に消えるとは思えなかった。
気になって次の日も来てみると、また、棒人間は微妙に動いていた。
背筋がゾッとした。
一方、自分だけがこの奇妙な現象を知っているという興奮もあった。
それから毎日、俺は棒人間の変化をスマホで撮影した。最終的にどうなるのか見届けて、みんなに話そうと思った。ネットにアップすれば、もしかしたら話題になるかもしれない。
二週間ほどかけて、棒人間は、背中に回していた手を、また身体の前に出した。その手には、どうやら何かが握られているらしい。
まるでパラパラ漫画を一コマずつ撮影しているようだった。
そのまた二週間後。
握っているものが何かわかった。
・・・包丁だった。
包丁を抜いた棒人間はこれからどうするのか。気になったけど、なんだか、だんだん不気味さの方が勝ってきた。
棒人間が動いている証拠の写真はいっぱい手に入ったし、今日で最後にしようと思った日。
棒人間の落書きが消えていた。
掃除の人が消してしまったのか。
その時、シンとしたトイレに、ペタ、という音がした。誰かがトイレにいる。
ペタ・・・ペタ・・・ペタ・・・
素足で歩くような音だった。
まさか、まさか、まさか・・・。
ペタ・・・。
足音は俺がいる個室の前で止まった。
静寂が訪れた。
・・・棒人間の落書きが消されたのではなかったとしたら。
ドアの前にいるのは一体・・・。
僕の学校の体育館裏には、あまり使われていないトイレがある。暗くてジメジメして気味が悪いので普段は使わないのだけど、今日はお腹が痛くてやむをえず駆け込んだ。
一番奥の個室に入ると、ちょうど目の高さに落書きがあった。
棒人間が2体。
刃物を持った棒人間が、もう一体の棒人間を追っていた・・・。