【怖い話】ゴミ捨て場の声

これはマンションのゴミ捨て場に関する怖い話。
 
Gさんが暮らすマンションのゴミ捨て場は、倉庫のような見た目のボックス型で、スライド式のドアを開けると、3m四方のスペースがあって、分別してゴミを置けるようになっている。

Gさんは仕事柄、朝が遅いので、前日の夜中に翌日のゴミを置きにいく習慣があった。

ある日、いつものように深夜にゴミを捨てに行くと、どこからともなく人の声が聞こえてきた。
よくよく聞いてみると、その声はゴミ捨て場の中から聞こえた。
ゴミ捨て場は鋼板でできているため、外から中は見えない。
誰かがゴミを捨てている最中なのかとGさんは思い、しばらくその場で待っていた。
ところが、2分ほど待っても誰も出てこない。
話し声もいつの間にか止んでいる。
ソッとゴミ捨て場のスライドドアを開けてみると、中には、誰もいなかった。

さっきの声は聞き間違いか、それとも、、、

その一件があってから、Gさんは夜中にゴミ捨てにいくのが怖くなってしまい、朝起きてゴミを捨てるようになった。
しかし、長年の習慣はなかなか抜けないもので、しばらくすると、朝早く起きるのが億劫になり、ゴミを溜めがちになってしまった。
さすがにマズイと思って、Gさんは再び夜中にゴミを捨てにいくことにした。

深夜2時頃。
あたりは寝静まっていて虫の音しか聞こえない。
マンションを1階まで降りて、ゴミ捨て場に向かう。
すると、またも、中から声が聞こえるではないか。
年齢も性別も判然としないゴニョゴニョとした声だが、明らかに誰かがゴミ捨て場の中でしゃべっている。
Gさんは、恐ろしくて、ゴミを持ったまま回れ右をして自宅に走って帰った。

あのゴミ捨て場は何かおかしい、、、

Gさんは、マンションの管理人に相談してみることにした。
怪談話ではなく、誰かが夜中にイタズラしているのではというニュアンスで説明したが、管理人は明らかに怪訝そうな顔つきだった。
それでも、調べてみますと言ってもらい、あくる日の朝、Gさんはその管理人に呼び止められた。

いくら待っても人の声は聞こえなかったそうだが、ゴミ捨て場を整理していたら、奥からこんなものが出てきましたと言って、管理人は、ある物をGさんに見せてくれた。
それは、子供向けのおもちゃだった。
あいにくGさんには何のキャラクターなのかわからなかったが、人型をした愛らしい見た目のおもちゃだった。
しかし、長年、ゴミ捨て場に放置されていたせいか、至る所が黒く変色していて、まるで病に冒されているようで化け物じみて見えた。

・・・あの声は、もしかしたら、このおもちゃが?

オカルトじみた話を信じているわけではないが、Gさんは、忘れられゴミ捨て場に打ち捨てられたおもちゃに同情してしまうくらいには、子供の頃からモノを大切にする人だった。

汚物でも触るようにゴミ袋におもちゃを戻そうとした管理人さんをGさんはハッと止めた。

「この子は私に預からせてくれませんか」
Gさんは、おもちゃを預かって、お寺で供養してもらうことにした。

それからというもの、ゴミ捨て場で声が聞こえることはなくなったという、、、。

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