ひな祭りの怖い話 #289
ひな祭りには、怖い思い出があります。
私の実家では、ひな祭りになると、7段飾りの立派な雛人形を毎年飾っていたのですが、この雛人形が奇妙なのです。
はじまりは私が5歳の時でした。
3月4日の朝、起きて雛人形を見に行くと、お雛様の人形がいなくなっていました。
あたりを探し回ると、雛壇の裏の空間にお雛様の人形が置いてありました。
私には姉が二人おりましたので、二人の仕業だろうと思ったのですが、
二人とも自分がやったのではないと言います。
それだけなら、ちょっと不思議な出来事で終わったかもしれません。
ところが、お雛様は毎年のように、3月4日の朝、ひな壇以外の場所で発見されました。
誰も動かしていないのに・・・。
ある年のひな祭りの日。
この奇妙な現象を解明しようと、
私と姉二人は、雛人形を飾った部屋の隣の部屋に布団を並べて、
一晩中見張ることにしました。
トランプをしたりして時間を潰しましたが、
私はまだ子供だったので、睡魔に勝てず、
いつの間にか眠ってしまっていました。
目覚めると真夜中で、電気が消えて真っ暗でした。
姉二人も結局、眠ってしまっていました。
ハッとして、雛人形を見ました。
暗さに目が慣れてきて、だんだんと人形の輪郭が見えてきました。
ところが、お雛様が座っているはずの場所だけ、ぽっかりと空いていました。
姉達を起こそうと思った時、ゾワっと全身に悪寒が走りました。
・・・誰かに見られている。そんな感覚がありました。
ゆっくり周りを見渡して行くと、枕元に、お雛様がいました。
部屋は真っ暗なのに、お雛様の切れ長の目が妙にはっきりと見えました。
まるで目が光っているように・・・
私の悲鳴を聞いて、姉二人が慌てて目を覚ましました。
姉二人もお雛様が移動しているのにギョッとしていました。
お雛様は、結局、お寺で供養してもらい、引き取ってもらうことになりました。
翌年は、代わりのお雛様の人形を買い、飾ることになりました。
これでもう変なことは起こらないだろう。
みんなそう思っていたのに、その年も、お雛様の人形は、移動しました。
それ以来、私の家では、雛人形を飾るのをやめました。
大人になったいまでも、ひな祭りは苦手です。
雛人形を飾るのをやめてからも奇妙な出来事は収まりませんでした。
毎年、3月3日の夜になると、雛人形をしまってある押入れからガサガサと音が聞こえるのです。
30歳を過ぎても姉二人はいまだに未婚で、私は男の人で苦労続きでした。
それは、もしかすると、実家の雛人形の呪いなのではないか、
そんな気がしてしまいました・・・。
今度、実家の雛人形の来歴を真剣に調べようと思っています。