【怖い話】【心霊】第157話「学校の七不思議③」

2017/09/11

 

私が通っている小学校の図書室には怖い噂がありました。
放課後図書委員の人が受付に座っていると、誰もいないのに本をめくる音がしたり、
借りた本を開いたら血のような染みがついていたとか、挙げれば切りがありません。
なので、図書委員になりたがる人は少なく、いつも人手不足で、ある日、国語の成績がいいからという滅茶苦茶な理由で私は担任の先生から図書委員に指名されてしまいました。
図書委員の仕事はシンプルです。昼休みと放課後、図書室の受付に座って、本を借りたい人がいれば貸出カードに貸出日のハンコを押すだけです。あまり図書室の利用率がよくないのでほとんどの時間は受付に座っているだけでした。
片手間で本を読んだり宿題を済ませられるのはいいのですが、空き時間が多いと、例の怖い噂をどうしても思い出して、背筋が寒くなります。
2ヶ月くらい経ちましたが、不可解な現象は起きませんでした。
だいぶ委員の仕事にも慣れ、よく見かける顔馴染みの生徒と少し話すようにもなりました。
一人変わった生徒がいました。
5年生か6年生の男子で、いつも同じ本を返しては借りていくのです。よほどその本が好きなのか、全然読み終わらないかわかりませんが、他の本には見向きもせず、とある偉人の伝記をずっと借りていました。
「好きなんだね」
ある時、その男子の返却作業をしながら、なにげなく話しかけてみました。
すると、いつも黙ってうつ向いていた彼が顔を上げてニコッと笑いました。その優しい笑顔に私は胸がドキッとしました。
「よかったら読んでみなよ」
「借りてもいいの?」
「もちろん」
その夜。私はベッドで彼から借りた本(図書室のものですが)を読んでみました。
授業で習ったこともある発明家の伝記です。彼の笑顔が頭にちらつき内容が全然頭に入ってきませんでした。
「・・・え?」
・・・あるページで手が止まりました。
「なにこれ・・・」
中盤の1ページだけ、真っ赤な手形がいっぱいついていました。まるで血が固まったような赤紫の色をしていました。
・・・これって、まさか。
私は本を閉じ鞄に放り投げました。
翌日。私は、その本を書棚に戻しました。
・・・噂の本が本当にあった。しかも、どうしてあの子は返しては借りるというのを繰り返しているのか。わからないことばかりでした。
その日、例の男子は図書室を訪れませんでした。
家に帰ると、まだお母さんは帰ってきてませんでした。シーンと静まり返った家に一人ぼっち。いつも気にならないのに、今日は心細さの方が勝りました。
その時でした・・・。

サッサッサッサッ・・・。

本をめくる音がしました。私の部屋の方からです。誰もいないはずなのに・・・。
背筋が寒くなりました。
図書室の怖い噂を思い出しました。
私は、自分の部屋のドアを開けました。
机の上に、さっき図書室に返却したはずの偉人の伝記が置いてありました。そして、風もないのにひとりでにページがめくられていました・・・。

・・・私に本を貸して以来、あの男子は図書室に来なくなりました。私はどうしても彼に確かめなければならないことがあり、学校中を探しました。そして、ようやく6年生の教室で見つけました。
彼は私が現れるのを予期していたように平然としていました。
「キミが聞きたいことはわかってるよ。例の本をどうしたら手放せるかってことだろ?返却しても、捨てても、燃やしても手元に戻ってくる・・・逃れる方法は一つ。キミも誰かに貸すしかない」

「・・・その本いつも読んでるけど、そんなに楽しいの?」
図書室の受付で偉人の伝記を読んでいた私に顔馴染みの女子が話しかけてきた。ようやく、私もこの本から解放されそうだ・・・。

-学校の怪談, 怖い話