【怖い話】【怪談】のぞく子

これは私の実家にまつわる怖い話です。
私の実家は、G県の山の中にあり、周りは雑木林や竹林に囲まれ、長閑な場所にあります。
私は小さい頃から家の和室が大のお気に入りでした。
畳敷きの床に障子戸があり、障子を開けると、縁側の向こうに一面の竹林が広がっています。
サワサワという葉擦れの音を聞きながらお茶を飲むのが至福の時間でした。

私が高校生だった、ある日のこと。
いつものように縁側の向こうの竹林を見ながらお茶を飲んでいると、いきなり視界が遮られました。
5歳くらいの男の子が立っていて、こちらをジッと見ているのです。
驚いた拍子にお茶をこぼしてしまいました。
慌ててハンドタオルでお茶を拭いて、再び縁側を見ると、男の子はいなくなっていました。
近所の子が迷い込んでしまったのだろうか。
その時は、そんな風に思いました。

それからしばらく経って、男の子がのぞいていたことなどすっかり忘れていた頃です。
再び、縁側に男の子が現れました。
今度は同い歳くらいの女の子も一緒でした。
2人は並んで立ち、ジッと、家の中を覗いています。
私が、立ち上がると、2人はサッと姿を消してしまい、窓を開けて外を見た時には、もうどこにもいませんでした。

その2日後のことです。
今度は、先日の2人に加えてさらにもう1人の男の子が加わり、3人の子供が和室を覗きにきました。
間違えて人の家の庭に入り込んでしまったのであれば、こう何度もこないはずです。
一体なんなんだろう、何かウチの家におかしなところでもあって見物に来ているのだろうかと少し気分が悪くなりました。
一言いってやろうと思って窓を開けに行こうとすると、サッと逃げていきました。

母に事情を説明し、子供の人となりを話したのですが、「このあたりにそんな子供いたかなぁ」と首を傾げるだけでした。
田舎なので防犯意識も低く、子供ともあって、なんら問題視している様子はありませんでした。
けど、私はもやもやとする不快感を覚えていました。

私は一計を案じて、今度来たら映像に収めておこうと考えました。
動かぬ証拠をおさえて、子供の親にやめさせるよう頼もうと思ったのです。
和室にハンディカメラを置いておいて、一週間ほどして、その日はきました。

ひょこっと現れた子供。
最初の男の子です。
慌てて私はカメラを向けました。
続いて起きた出来事に私は呆然としました。
新しい子供が1人、また1人と増えていきました。
その数、総勢10人以上。
全員が見開いた目で和室を覗いています。
カメラを持つ手が震えました。
しばらく、カメラを向けていると、子供達は潮が引くようにサッといなくなりました。

「お母さん!お母さん!」
私は、慌てて、キッチンにいる母を呼びました。
母と一緒に、撮影した映像を再生した私は目を疑いました。
子供は1人も録画されていなかったのです。
あれだけ大勢いたのに1人もです。
誰も立っていない障子の向こうの竹林が映っているだけでした。
「ちょっと疲れてるんじゃない?」
そう言う母に何も言い返せませんでした。
アレは生きた子供達ではなかったのです。
背中に冷たい汗が流れました。

困り果てた私は、藁にもすがる思いで、霊感があるという同級生に相談して、和室をみてもらうことにしました。
すると、到着するなり、その子は和室にいくのではなく裏の竹林に向かいました。
その子が、こんもりとした木の葉の山を掻き分けると、埋もれていた石のお社が出てきました。
こんなお社があるなんて初めて知りました。
「ここ、霊道になってるんだよ。霊が通る道なの。この社が、霊達が家に向かわないよう道標の役割をしていたのに、手入れをしなくなったから力がなくなったんだと思う」
その子のアドバイス通り、社の周りを掃除して、お供え物をしたら、それ以降、子供が庭に迷い込むことはただの一度もありませんでした。

母は、庭の社の手入れを継続する私を、「そんなに信心深かったっけ」と不思議そうな顔でいつもみてきます。
その度、私はいつも、「お母さんは怖い目にあってないからこの気持ちがわからないんだ」と心の中で毒づいています。

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