【怖い話】【サスペンス】第158話「踏切に立つ人」

2017/10/16

 

高校の通学路に踏切がある。
一度つかまると10~15分は軽く足止めを食らう。いわゆる"開かずの踏切"というやつだ。
遮断機が降りている間に電車4、5本は見送らなければならない。
遅刻するかどうかが踏切次第という、僕には厄介な存在でしかなかった。

ある時、その踏切が開くのを待っている間に奇妙な女性を目撃した。
女性は遮断機ギリギリに立ち、ステップを踏んでいた。これから助走を始めるかのように、上半身を小さくユラユラさせている。
しかも電車が通過するタイミングにだ。
女性は線路に飛び込むつもりなんじゃないか、そう思って目が離せなかった。
何事もなく踏切が開いた時には、安堵した。

そのことがあってから数週間後。
朝起きると母親が興奮した様子で僕に言った。
「例の踏切で、電車に飛び込みがあったらしいよ」
「いつ?」
「今朝早く」
頭に、あの時、踏切でステップを踏んでいた女性の姿が浮かんだ。
「・・・女の人?」
僕は母親にたずねた。
「男の人だって」

翌日。運悪く踏切に引っ掛かってしまった。
踏切の前には花束が供えられていた。
本当にここで誰かが死んだんだ。
そう思うと背筋が寒くなった。
その時、僕の横に誰かが立った。
この前見た女性だった。
女性の視線が、ふと、供えられている花束の
方に向けられた。
ゾッとした。
女性の口元が微かに笑っているように見えたからだ。
そういえば、今日は、まるでステップを踏んでいない。
あのタイミングを測るような動きはもしかして・・・。
恐ろしい可能性が頭に浮かんだ。
僕は心の中で、一秒でも早く踏切が開いて欲しいと願っていた・・・。

-サスペンス, 怖い話