ハロウィン #076

2017/10/25

 

フランケンシュタイン、ドラキュラ、ゾンビ、ミイラなどなど。
クラブのフロアは、たくさんの化け物たちで溢れていた。
今日はハロウィン。
友達に誘われてクラブのパーティーに参加していた。
仮装した人たちが音楽に合わせて踊る様は、本物のモンスターたちがはしゃいでいるようで異様な光景だった。
私は、魔女の仮装で参加していたが、もともと引っ込み思案な性格のため、楽しそうに踊っている友達を横目に、さっきからずっと一人で壁際に立ち尽くしていた。
やっぱり来なければよかったなぁと思い始めた頃、私の前に“死神”が現れた。
黒いマントを頭から被って、ドクロのマスクをつけていた。
おもむろに死神は私の手を握った。
氷のように冷たい手だった。
エスコートするように、優しい手つきで連れていかれた。
どうせ一人ぼっちだった私は、手を引かれるままついていった。
踊る人の間を縫っていくように、死神は私を店の裏口の方へ招いていった。
その時、反対側の手を誰かに掴まれ、耳元で声がした。
「行ったらだめ」
「・・・え?」と振り返ると、誰も私の手を掴んでいなかった。
そして、エスコートしていたはずの死神も忽然と消えていた。
氷のような手の冷たさだけが、私の手に残っていた。

翌朝。ハロウィンの仮装用の衣装が至る所で脱ぎ捨てられていて地域住民が困っているとニュースで取り上げられていた。
本当は服衣装を脱ぎ捨てていったのではなく連れ去られたのではないか・・・。
そんな想像が膨らんで、ゾッとした。
・・・昨日、私を止めてくれた声は誰だったのか。
そして、あの“死神”の正体はなんだったのか。
今もって謎のままだ・・・。

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