【怖い話】入っていい?

これは私が24歳の時に体験した怖い話です。
当時、派遣でOLをしていた私は一人暮らしのマンションと職場の往復で単調な毎日を過ごしていました。
そんな、ある日のこと。
駅前を歩いていたらスーツを着た男性に声をかけられました。
ナンパでした。
普段はナンパなどしていなさそうな爽やかな見た目の人でした。
暇を持て余していた私は、「お茶だけなら」と応じました。
年齢は私の3歳上で、年代が近いこともあってか会話が弾み、何度かデートをした後で、彼の方から交際の申し出があり、付き合いがスタートしました。

交際して2ヶ月が経った頃です。
はじめて彼氏が私の部屋に来ることになりました。
金曜の夜だったので、お酒やおつまみを用意して待っていました。
ところが約束の時間になっても彼氏が来ません。
1時間、2時間と時間が経過していき、夜もだいぶ更けてきた頃でした。
突然、玄関をノックする音がしてビックリしました。
私のマンションはオートロックなのでいきなり玄関に人が来ることは滅多にないのです。
コンコン・・コンコン・・
ノックは続きます。
宅配業者かなと初めは思いました。
けど、その日に到着する予定の荷物などないことを思い出し、彼氏が到着したのかと思い玄関に向かいました。
「入っていい?」
彼氏の声がしました。
けど、私はドアをあけるのをためらいました。
なんでかわかりませんが、開けたらいけないような気がしたのです。
オートロックをすり抜けていきなり玄関に彼氏が現れたのが引っかかったのかもしれません。
コンコン・・コンコン・・
「入っていい?」
私が応答しないでいると彼氏の呼びかけが続きました。
「入っていい?」
「入っていい?」
「入っていい?」
「入ッテイイ?」
「入ッテイイ?」
「入ッテイイ?」
答えないでいると、彼氏は繰り返しそう呼びかけてきました。
たしかに彼氏の声でしたが、無機質で単調な声で、まるで録音した彼氏の声を繰り返し再生しているようでした。
私は気味が悪くなって耳を塞ぎました。

どれくらいそうしていたでしょう。
気がつくと声は止んでいました。
慌てて彼氏に電話しましたが応答はありませんでした。

結局、彼氏はその日現れませんでした。
それどころか、その日以来、一切、連絡がつかなくなってしまいました。
なんとか連絡を取らないとと思ったのですが、私は彼が住んでる場所もまだ知らなければ、彼の職場や家族構成など曖昧な情報しか聞いていないことにその時はじめて考えいたりました。
彼のことを私は何も知らなかったのです。
彼の身に何が起きたのか、いや、そもそも彼は何者だったのか、何度となく考えた私はある可能性に気がついて慄然としました。

彼は本当に存在した人間だったのでしょうか、、、。

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