高尾山の怖い話 #227

 

これは数年前、大学の友人2人と真夜中の高尾山にいった時に体験した怖い話だ。
高尾山は東京都八王子市にある山だ。
都心からアクセスがいいので観光客が多く訪れる。
ロープウェイも整備されていて、夏場になるとビアガーデンがオープンする。
しかし、季節外れの真夜中となると話は別だ。
僕達が行ったのは12月の寒い日だった。
電気が落ちたロープウェイ乗り場は人の気配がなくシンとしていた。
ロープウェイ乗り場の近くから、登山道が始まっている。
普段観光客が多いのでかなり歩きやすく整備されている。
僕達3人は懐中電灯を片手に登山道を登っていった。
目的などなかった。
単なる思いつきだった。
僕達は全員八王子市内の同じ大学に通っている。
「そういえば高尾山いったことない」
僕は自分が言った発言を後悔していた。
「じゃあ、行こうぜ」
完全なワルノリだ。
12月の夜の登山道は凍えるような寒さだった。
厚手の服のすきまから冷たい風が吹きつけた。
30分ほど登って僕は言った。
「帰らない?」
「だな」
他の2人も顔がかじかんで赤くなり、鼻水を垂らしていた。
「俺達、馬鹿みたいだな」
「間違いない」
「あ、温泉寄ってかない?」
「賛成」
帰れると思うと気が楽だった。
僕達は自分達の馬鹿さ加減を笑いながら来た道を下り始めた。
だいぶ道がなだらかになってきた頃、登山道入口の方から5つの懐中電灯の明かりが登ってくるのが見えた。
どうやら自分達以外にも似たようなことを考える馬鹿なグループがいたようだ。
僕は妙な親近感を勝手に覚えながら、下っていった。
細い登山道で僕達はすれ違った。
5つの懐中電灯は、年齢も性別もバラバラのグループだった。
全員マスクをつけていた。
家族なのかもしれないけど親密さが感じられなかった。
挨拶くらいしようかと思ったけど、彼らはまるで僕達と目を合わせようとしなかった。
俯いたまま通りすぎていった。
ただ5人全員黒いポリ袋のようなものを手に持っていた。
変な集団だな・・・。
他の2人もそう思ったみたいで、僕達はしばらく立ち止まって、彼らが登っていくのを見ていた。
やがて5人は高尾山の闇に消えていった。

最近になるまで、このことはずっと忘れていたのだけど、先日、あるニュースをネットでたまたま見かけてハッと思い出した。
高尾山中から白骨化したバラバラ死体が発見されたというニュースだ。
死体は全部で5つに分解されていたという・・・。
5人がそれぞれ持っていたポリ袋・・・。
ニュースを知ってすぐに、あの時一緒に登った2人に連絡を取ろうとしたのだけど、
2人とも電話番号が変わっていて繋がらなかった。
なにかおかしい・・・。
つい最近まで連絡を取り合っていたのに。
インターフォンが鳴っている。
誰かがきたらしい。
2人のことは後で考えることにして、僕は玄関に向かった・・・。

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