【怖い話】訪問客

Dさんはインターフォンの音で目を覚ました。
無視してそのまま眠ろうかと思ったけど、何度も鳴らされて眠れなくなってしまった。

昨夜は金曜日だったので飲みすぎてしまい、家に帰るとそのまま倒れるように眠ってしまった。
まだ眠い頭でフラつきながら玄関のドアを開けると、スーツを着た男性が立っていた。
男性は児童相談所の職員だと名乗った。
Dさんがポカンとしていると、男性は「お子さんはご在宅ですか?」と聞いてきた。
「はぁ?」
間の抜けた返事しかできなかった。
それもそのはず。
Dさんは独身で子供どころか恋人もいない。
そう説明すると、児童相談所の男性も困った様子で、帰っていった。

それだけなら、何かの間違いですんだのだが、
1ヶ月後、またもや訪問があった。
同じ職員の男性だった。
Dさんが前回と同じ説明をすると、預かっている子供がいないかと児童相談所の男性が聞いてきた。
疑われても癪なので、「なんなら家をみますか?」とDさんが言うと、「いえ、結構です」と男性は引き返していった。

二度あることは三度あるというが、二週間後、再び児童相談所の男性が訪れてきた。
男性は、今回は最初から申し訳なさそうで自分も不本意な訪問だという顔つきだった。
Dさんは、いい加減我慢できず、訪問の理由を訪ねてみた。
すると、本当は話したらいけないのですが、と前置きをして児童相談所の男性が教えてくれた。

「この部屋のベランダに深夜、5歳くらいの男の子がずっと立たされていると通報があるんですよ・・・しかも何件も」

Dさんは言葉を失った。
そんな子供のことをDさんは知らないし、何の心当たりもなかった。
「何かの見間違いだと思うのですが、、、」
児童相談所の職員は恐縮した様子で帰っていった。

Dさんは振り返って、カーテンを引いた窓の方を見た。
あの窓の奥のベランダに男の子が立っている?
ありえない話だけど、通報されて確認がくるくらいだから実際に何人もの人が見ているのだろう。

Dさんは、恐る恐るベランダに出てみた。
そこに、男の子の姿はなかった。
当たり前だけど、ホッと一安心した。
バカバカしい、、、
そう思って部屋に引き返そうとした瞬間、背後から子供の笑い声がはっきり聞こえた気がした。
振り返っても誰もいない。
Dさんは背筋が寒くなって逃げるように部屋に入った。

それ以来、Dさんは、怖くてベランダに出ることができなくなってしまった。
夜になると、今でも、カーテンの向こうに何かがいるような気配を感じることがあるのだという。

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