これは俺が高校2年の時に体験した怖い話。
俺が住んでいたのは田んぼとか畑とかばっかりの田舎だ。
当時、俺は少し荒れていて、家にはあまり寄りつかず夜遅く友達と遊び歩く生活を送っていた。
その日も約束があって、夜中に友達の家に向かっていた。
田舎なので街灯なんてほとんどない。
真っ暗な道を歩いていたら、
ザクッザクッという音が聞こえてきた。
見ると、だだっぴろい畑に人影があった。
音から推測するに、シャベルで穴を掘っているようだ。
こんな夜中に何で穴なんて掘ってるんだ?
もしかしてヘソクリでも埋めてるのか?
田舎なので狭い世界だ。
友達の土産話にしようと思って目を凝らした。
だんだん目が暗闇に慣れてきて人影がはっきりしてくる。
見たことがないおばさんだった。
骨と皮だけのガリガリな体つきに、ボサボサの髪。
その土地の所有者は顔見知りなので、少なくとも、その畑の持ち主ではなかった。
・・・なぜ、変な正義感が出たのか今となってはわからない。
畑泥棒だとしたら他人事じゃないという心理が働いたのかもしれない。
俺は近寄っていき、おばさんに声をかけた。
「なんで穴掘ってんすか?」
すると、おばさんは穴を掘る手を止め、クルッとこっちを振り返った。
「・・・お前の墓だ!」
いきなり胸ぐらを掴まれ、穴に落とされた。
ちょうど人が一人入るくらいの穴だった・・・。
おばさんは、男みたいに野太い声で笑いながら、俺の身体に土をかけはじめた。
逃げたいのに、身体が言うことをきかない。
声も出ない。
身体がどんどん土に埋まっていく。
このままでは生き埋めにされる。
・・・誰か助けてくれ!
・・・人の声で目が覚めた。
日光が眩しい。
気がつくと朝になっていた。
「お前、人の畑でなにやってるんだ。バカたれが!」
畑の所有者が怒っていた。
俺の身体は半分、土に埋まっていた。
一体、あの穴堀りババアは何者だったのか、それは今もって謎のままだ。
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