【怖い話】【心霊】9月の怖い話 #199

2017/09/11

 

9月は色々なものが新しくなる。
夏から秋へと季節はうつろい、学校は新学期が始まる。
仕事の関係で引っ越す人も多い。通勤通学の顔触れも変わる。
そして、移り変わるのは、何もこの世のものだけではない・・・。

父が体調を壊したのが始まりだった。
39℃の高熱が続いた。
病院で検査しても原因がわからないと言われた。
ほどなくして、祖母が徘徊をするようになった。
夏には元気に近所の婦人会で旅行に行ったばかりだったので、驚くしかなかった。
母は、病状が回復しない父と目が離せない祖母の面倒をみるうちに、心のバランスを崩した。「何もやる気がしない」と家事を放棄して、昼になっても起きてこなくなった。
それらのことが、9月に入ってたった数週間で立て続けに起きた。
どうして私の家ばかりさまざまな不幸にみまわれるのか。
不吉な予兆は他にもあった。
最近見かけない黒猫が家の周りをうろちょろするするようになったのだ。
さすがにおかしいと思い、厄除けの御守りを神社でいただいてきて神棚に飾った。
しかし、翌朝、その御守りは神棚から落下していて、鋭利な刃物で引き裂かれたように切り刻まれて見つかった。
どうしていいかわからず泣くしかなかった。
母の代わりにご飯の用意をしなくてはならなかったので、学校にも行けなかった。
・・・包丁で下ごしらえをしていると、このままいっそ死んでしまいたいと何度も頭をよぎった。
キッチンからリビングを見回す。
たった一ヶ月で、すっかりちらかって荒れてしまった。
家のどこもかしこも以前より暗くなった気がした。
憂鬱しかなかった。
現実を変えられない無力感が、全身を支配していた。
・・・もうダメだ。
首にロープを巻いて首を吊っている自分のイメージが脳内で何度もリプレイした。
死のう。ただ、そう思った。
延長コードを手に二階の自室に向かった。
ドアノブに延長コードをぐるぐるに巻いて輪を作り、自分の首をかけた。
これで楽になれる・・・。
その思った時だった。
にゃぁぁぁ!!
猫の鳴き声が聞こえた。
天井から鳴き声がした。屋根裏のようだ。
バリバリバリバリ。ガタガタガタ。にゃぁぁ!!
屋根裏で猫が何かと戦っているようだ。
ガタガタガタ!バタン!
私は信じられない光景を目にした。
部屋の押し入れの隙間から黒い霧のようなものが湧き出てきたかと思うと、
その霧は窓の隙間に吸い込まれるように外へと出て行った。
・・・ハッと我に返った。
自殺しようとするなんて、一体、自分は何を考えていたのか。
その日から、なぜか全てが良い方向にむかった。
父の体調は回復し、祖母の徘徊もおさまった。
母は働き者に戻った。
落ち着いてから冷静に振り返ってみると、
9月に入って、私の家に何か邪悪なものが住み着いてしまったのではないかと思う。
そして、あの日見た黒い霧こそ、その邪悪なものの正体だったのではないだろうか。
後日、天井裏で黒猫が死んでいるのを見つけた。
何があったのかは知るよしもない。
ただ、この黒猫がきっと私たち家族を悪いものから守ってくれたに違いないと私は信じている・・・。
季節の変わり目には、あの世のものたちも新しい場所を求めて移動するのかもしれない。

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