【怖い話】間違ってない電話

ある日のこと。
Y田さんの携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきた。
「もしもし、こちらは、A川さんの携帯電話でしょうか」と女性の声がした。
間違い電話だった。
「いえ、違います」
そう言って、Y田さんは電話をすぐに切った。
すると、数十秒後、同じ番号から再び電話がかかってきた。
「もしもし、A川さんの電話でしょうか」
「先ほども申し上げましたが、違います」
「番号は、090-××××-××××でお間違えないですか?」
それは確かにY田さんの番号だった。
「番号はそうですけど、私はA川という名前ではありません」
Y田さんは、イライラと電話を切った。
おそらく、電話番号を伝えた相手が、間違った番号を伝えていて、
それがたまたま自分の番号だったのだろう。
迷惑な話だ。

その日の夜。
寝つきかけていた時に、再び電話が鳴ってY田さんはびっくりした。
昼間、間違い電話をしてきた同じ番号だった。
まだしつこくかけてきたのかと驚いた。
しかもこんな夜中に。非常識にも程がある。
Y田さんは、電話を乱暴に取った。
「だから、私はA川じゃないと言ってるだろ!」
すると、一呼吸間があって女性が低いトーンで応じた。
「あなた、A川さんですよね?」
「は?だから違うって言ってるだろ」
「本当ですか?A川さんなんじゃないですか」
何を言ってるんだ、この女は。
Y田さんは常識が通じない相手に困惑した。
「そういうあんたこそ、誰なんですか?こんな夜遅くに電話をかけてきて。非常識じゃないか」
「やっぱりA川さんですよね?」
ダメだ。何も通じない。
Y田さんは諦めて電話を切った。
しかし、すぐに電話がかけ直ってきた。
Y田さんは、その番号を着信拒否設定した。
これで頭のおかしい電話がかかってくることもないだろう。
それにしても、女性の対応がおかしいとはいえ、
こんなにしつこく電話をされるなんて、
A川という人間は一体、何をしたのだろうとY田さんは思った。

その数日後のことだった。
自宅にいる時に、また別の見知らぬ電話番号から電話がかかってきた。
取ると、「A川さんですよね?」と先日の女性の声がした。
嘘だろ・・・。Y田さんはしばし絶句した後、怖くなって、電話を切った。
切る間際まで「A川さん聞いてますか?」と呼びかけられていた。
嫌な予感はしたが、すぐに電話はかけ直ってきた。
着信をいくら放置していても電話は何度も何度もかけ直されてきた。
取るまで諦めないつもりだ。
一体、なんなんだ、、、。
Y田さんは、背筋が凍る思いだった。
けど、このまま放置するわけにはいかない。
Y田さんはついに電話を取った。
「A川さんですよね?」
「違います。私はY田です。だからもう電話しないでください!」
「いえ、A川さんですよね?」
「違います。Y田です」
押し問答が続いて、Y田さんは、ふと気がついた。
もしかして間違い電話だとばかり思っていたが、女性からしたら間違ってない番号なのではないか。
Y田さんが携帯電話の番号を変えたのはちょうど一年前。その前に、A川という人間が同じ番号を使っていたのだとしたら、、、Y田さんは突破口を見つけた気持ちだった。
「もしかして、この番号をA川さんという人が以前使われてたんじゃないでしょうか」
「つまり、あなたはA川さんということですよね?」
ダメだ。いくら言っても相手の女性には通じない。
本当に精神を病んでいる人なのかもしれない。
埒が明かないと思って話題を変えた。
「そのA川さんという方に、あなたは何の用なんですか?」
「やっぱりA川さんですよね?」
「いや違いますけど。ご用件はなんなんですか?」
「あなた、A川さんなんですね?」
「だから違うけど!用はなんなのかって聞いているんです。こんなにしつこく電話してくるからよほどのことなんでしょう?」
「A川さんにお話があるんです」
「だから・・・」
Y田さんは少しでも話を進めたくて、嘘をつくことを思いついた。
「そうだよ。私がA川です」
すると、女性は黙ってしまった。
うんともすんとも言わない。
認めたら認めたでこれかよ、、、Y田さんは内心ため息をついた。
すると、電話口から深い息を吐く音がして女性が言った。
「・・・見つけた」
不思議なことに、その声は、少し遅れて二重にダブって聞こえた。
電話からの声と、妙に近くから聞こえる声・・・。
Y田さんは、ハッとして後ろを振り返った。
電話を耳に当てた黒髪の女が鼻をひくつかせてY田さんを睨みつけていた。
「A川、見つけたッ」
Y田さんは叫び声をあげたような気がする・・・。
というのも気がつくといつの間にか夜になっていたからだ。
長時間、意識を失っていたらしい。
通話が切れたスマホがすぐ近くに落ちていた。
一体、何が起きたのか、わけがわからなかった。
あの女性は、幽霊だったのか・・・。
いったいどんな恨みを買ったら、あんな顔で睨まれることがあるのだろう。
あれは、もはやヒトではなく鬼の形相だった。
A川という人物は、女性によほどひどい仕打ちをしたに違いない。

Y田さんは翌日、すぐに携帯の番号をかえた。
番号が新しくなってから、Y田さんに女性からの電話がかかってくることはなかった。
ただ、しばらくは、知らない番号からの電話が鳴ると、あの女性からかかってきたのではないかと、怖くてビクビクした。
あの女性は、A川という人物を探し当てるまで、きっと今日も同じ番号に電話をかけ続けているに違いない・・・。
そんな想像が膨らみ、Y田さんはブルッと寒気を感じたという。

#554

-怖い話, 男と女の怖い話