【怖い話】大食いチャンピオン

 

知り合いのFは、大食いが得意だった。
海外の大会に出場して優勝した経験もあった。
地方紙に記事が掲載されたこともあって、地元では結構名前が知られていた。

ある時、Fにタイで行われる大食い大会への招待状が届いた。
破格の出演料に加え、宿泊先として豪華ホテルが用意されていた。
優雅なもてなしの数々。
FはVIP待遇を堪能した。

大会はFの圧勝。
ココナッツ風味の饅頭を飲み物のように胃袋に入れていくFに、集まった観客は大いにわいた。

Fは大会後も現地の人から手厚い歓待を受けて、日本への帰路についた。

ところが、成田空港で異変が起きた。
Fは激しい腹痛を訴え、緊急搬送されたが、帰らぬ人となった。

司法解剖した医師は恐ろしいものを見た。
Fの胃から大量の小袋が発見された。
小袋の中身はコカイン。
Fの死因は袋が破れたことによる急性のコカイン中毒だった。
Fは知らぬまに密輸の運び屋にさせられていた。大食い大会も偽装されたイベントだったのだ。

Fの体内からはゆうに数百袋の小袋が発見されたという。

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