【怖い話】映画館で隣に座った人 #275
これは先日、映画館で体験した怖い話。
私は、映画館に行くのが好きで、仕事帰りにフラッと一人で映画を見にいくこともある。
ある日、以前から見ようと思っていた映画の上映が今週末に終わることを知り、レイトショーを一人で見に行くことにした。
私が通っているのは、駅前のショッピングモールと併設されたシネコンなのだが、平日の夜だとわりと空いている。
その日は、上映期間終了間際の作品だったこともあり、特にガラガラだった。
上映時間になっても200席の劇場に4、5人しかいなかった。
ところが、予告編が終わり劇場が暗くなると、私のすぐ左横の席に40代くらいの会社員風の男性が座った。
そのシネコンは全席指定なので、あえて私の真横の席を選んだとしか思えないが、 これほど空いているのに、どうしてわざわざ真横の席に座るのか、理解できなかった。
よほど座席の位置にこだわりがあるのだろうか。
混んでるなら我慢するが、これほど空いているのに、隣同士に座る理由は私にはなかった。
私は鞄を持って2列前の真ん中に移動した。
それから、映画の中盤くらいまで特に何もなかった。
けど、終盤の盛り上がりに入ろうという時、真後ろから「ヒュッ」という呼吸音が聞こえた。
・・・後ろには誰も座っていないはずなのに。
眼球だけで後ろを確認した。
私の隣に座った男性が、真後ろに移動していた。
・・・なぜ?
理由はわからなかったけど、とにかく怖かった。
真っ暗な中、背後を取られるのは恐怖でしかない。
いきなり刃物で刺されたりするのでは・・・そんな嫌な想像が頭をよぎる。
ちょうど見ていた作品がサスペンスだったので余計にそう感じたのかもしれない。
とにかく怖かった。
私は耐えられず、映画はいいところだったけど再び席を移動することにした。
入口近くのかなり前よりな席にしようと思った。
そこは、入口の壁を背後にした席なので後ろを取られる心配はない。
席を立ち、フットライトだけがついた緩やかな段差を降りていく。
・・・けど、何かがおかしい。
さっき上から見た時には、目指す席の周りには誰も座っていなかったのに、今は誰かの黒い頭が見えた。
嫌な予感がしたのと、頭が振り向くのが同時だった。
今は真後ろに座っているはずの男性が先回りして、私を見てニタニタとした笑みを浮かべていた。
咄嗟に劇場の入口の方に逃げた。
扉を跳ね開け、明るい廊下に出ると、足がもつれて床に転んだ。
「大丈夫ですか?」
スタッフの人が心配そうに駆け寄ってくれた。
気持ちを落ち着かせようと、しばらく廊下の長椅子に座っていると、ちょうど私が見ていた映画の上映が終わって、お客さんが出てきた。
けど、私の隣に座った男性は、いつまで経っても劇場から出てくることはなかった。
それ以来、私は一人で映画館にいけなくなった・・・。