【怖い話】福袋

これはボクが高校生の時に体験した怖い話。

近所のリサイクルショップが年始にリサイクル品の福袋を販売していて、当たりだとニンテンドースイッチが入っているとチラシに書いてあった。
チラシを見たボクは、その福袋を試しに2つ買ってみた。
1つ1000円で、福袋の中身は家電から服まで様々らしい。
新年一発目の、ちょっとした運試し程度の気持ちだった。

家に帰ると、さっそく一つ目の袋を開けてみた。
パッと見、ニンテンドースイッチは残念ながら入っていなかった。
聞いたことがないタイトルの恋愛映画のDVD、アクセサリー、キーホルダー、バスタオルが入っていた。
なんとも微妙にいらないものばかりだ。
2つ目を開けてみる。
スイッチは、やはりない。
ダメだったかぁと思いながら、中身を確認する。
女性ものの化粧ポーチ、聞いたことがないキャラのぬいぐるみ、ゴルフ用手袋、そして色鉛筆セットが入っていた。
2つ目の福袋も、いらないものばかりだった。
わかっていたことではあったが、がっかり感は否めない。
しかも、色鉛筆セット開けてみると、芯が短くなっているものが多く、何色か欠けていてそこだけぽっかり空きができていた。
おいおい、こんなもの売りに出していいのかと心の中で突っ込みを入れた。

福袋を投げ出し、その後は例年通りの寝正月だ。
コタツで、たまっていたドラマの録画データを見たり漫画を読んだり、そんなことをしているうちに時間がどんどん過ぎていく。
夜半になって、自分の部屋に上がると、奇妙なことが起きていた。
福袋の景品の色鉛筆セットが机の上にバラバラになっていった。
しかも、あろうことか机に何か描こうとした跡があった。
妹の仕業かと思ったけど、普段、妹はボクの部屋に入ってこない。
気味が悪いなと思いながらも、色鉛筆セットを片付けた。
机の落書きはウェットティッシュで拭いたら、きれいに取れた。

その日はそのまま寝た。
朝方起きると、色鉛筆がまた机の上に転がっていた。
また机の上に何か描かれている。
みみずがのたくったようなタッチだったが、絵を描こうとしたように見えた。
背中に寒気が走った。
もしかしたら、これは心霊現象なのではないか。
リサイクル品は、誰が使っていたかわからない。
とんだ、いわくつきの品を引き当ててしまったのかもしれない。
色鉛筆セットをすぐに捨てようかとも思ったけど、捨ててバチでも当たったら嫌だなという気持ちもあった。

どうしようか迷ったあげく、ボクは部屋に紙を置いておくことにした。
霊なのかなんなのかわからないけどこの事象を起こしている何かは、絵を描きたいらしいので、望みを叶えてみることにしたのだ。

1/3は毎年親戚が来る日なので、夜までリビングで親戚付き合いをした。
夕ご飯を食べて部屋に戻ると、紙に絵が描かれていた。
子供が描いた絵に見えた。
アパートの一室を描いたのだろうか。
窓やタンスのようなモノが描かれている。
幼稚園に飾ってありそうな絵だ。
けど、なにかがかけている気がしてならなかった。
それがなんなのかはよくわからない。
しばらく絵を眺めてみたけど、答えはでなかった。
何かのメッセージを伝えたいのか、それすらもわからない。
怖いは怖いのだけど、それ以上に、謎に対する答えを知りたい気持ちが強かった。

ふと、気がついた。
欠けているように感じるのは、色が足りてないから、描ききれていないのではないか。
もし、色鉛筆の色が揃えば、この絵は完成するのではないか。
翌日、ボクは近所の文房具屋さんに出かけ、欠けている色の鉛筆を買ってきた。
箱の空きスペースに入れてみると、きれいに全16色の色鉛筆が揃った。

その翌朝。
起きてすぐ机を確認すると、机の上に色鉛筆が散乱している。
紙を見てみる。
ちゃんと絵が描かれている。
予想通りだ。
ただ、その絵を見て、ボクはギョッとした。
昨日の絵と同じくアパートの一室に、大人の男性のような人物が描かれている。
その男性のお腹からは真っ赤な液体が四方八方に飛び散り、部屋中を赤く染めていた。
これは、、、殺害現場だろうか。
背筋に寒気がゾゾと走った。

気味が悪くなったボクは、
その絵と色鉛筆はそのままに、部屋を後にした。
その日は友達と初詣の予定があったので、神社に参拝にいった。
お守りを買って帰ってくると、部屋の中で何枚もの画用紙が散乱していた。
画用紙には、色鉛筆を叩きつけたような荒い筆跡で毒々しい絵が描かれていた。
首が切れた子供、お腹を切り裂かれた女性、首を吊る何人もの人達、、、
どの絵も見ているだけで気が狂いそうな異常さだった。間違いなく、この絵の描き手は狂っている。
欠けている色鉛筆を補充するなんて、しなければよかった。
ボクは後悔し始めた。
明日、色鉛筆ごと全部の絵を燃やしてしまおう、そう思って、その日は眠りについた。

深夜、ブチブチブチという奇妙な音で目が覚めた。
音は枕元から聞こえる。
電気をつけると、初詣で買ったばかりのお守りを結っている糸が、誰もいないのに、ものすごい力で引き裂かれているかのように、一本一本切れていって、糸が切れるたびブチッという音を立てていた。

それとはまた別の音も聞こえた。
机の上、黒の色鉛筆が、見えない描き手の手に握られているみたいにひとりでに立ち、画用紙に線を描いていた。
と思ったら、ボクの視線に気がついたかのように、黒の色鉛筆は力を失い机を転がった。
画用紙の絵を見てみた。
ベッドで眠る青年に何本もの包丁が突き立てられ、血が吹き出している。
「うわぁ」
思わず声が出た。
・・・これはボクだ。
見た瞬間に悟った。
怖くなって、ボクはその画用紙をグチャグチャに丸めた。
他の絵と一緒に朝になったら庭で燃やしてしまおうと思った。
ベッドで体育座りをしていて朝を待った。
何か音がするたび、身体がビクッと反応した。
完全に心が恐怖に支配されていた。

カーテンの隙間から朝日が差し込むと、いてもたってもいられず、絵と色鉛筆をダンボールに押し込んで庭に出た。
油をかけて、マッチで火をつけた。
赤黒い火柱が舞い、黒煙がお正月の空に立ち上った。
これで終わった・・・。
安堵してボクはその場に座りこんだ。
その時、パン!と火の粉が弾けるような音がして画用紙が一枚、上空に舞った。
高く舞い上がった画用紙は、ヒラ、ヒラ、ヒラと降りてきて、座っているボクの目の前に落ちてきた。

画用紙の絵が視界に入って、ボクは声をあげそうになった。
憤怒に歪んで歯を剥き出しにした男の顔がこちらを見つめていた。
幼稚園生が描いたような今までの絵とは明らかにタッチが違う。
もっと写実的で、、、いや、あれは本当に絵なのか。
妙にリアルだったし、見かけた覚えがない絵だった。
火の中に舞い戻った画用紙を慌てて拾い上げようとしたけど、火の勢いが強く取り出すことができなかった。
ひょっとしたら、さっきの男性が絵の描き手なのかもしれない。
作品や色鉛筆セットを燃やされるのを嫌がってボクに怒りの感情を向けてきたのかもしれないと思った。
だとしたら、燃やすのは対策としては間違いではなかったことになる。

福袋なんて買うもんじゃないなとほとほと思った。
実は、福袋に入っていたぬいぐるみについても色々あったのだけど、それはまた別の話・・・。

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