文化祭の怖い話 #207

 

先日、私が通う高校で文化祭があったのですが、そこで起きた恐ろしい出来事をお話します。

私のクラスの出し物は、お化け屋敷でした。
大道具やお化け役の衣装の作成で、連日、夜遅くまで残って準備していました。
前日の夜、机をどかして、窓ガラス一面に黒いポリ袋を張り、ハリボテのお墓や怖い絵や人形の生首などの飾りつけをし、ようやく完成した時は涙が出るほどの達成感がありました。
いよいよ当日となりました。
私は期間中、受付を担当することになっていました。
教室から上がる悲鳴の数々を聞くだけで、手応えは十分でした。
口コミで評判は広がり、午前中のうちに30分待ちの行列ができていました。
怖いとネットで評判の遊園地のお化け屋敷をみんなで研究した甲斐がありました。
「ほんと怖かったぁ」
「マジやばかったね」
出口から出てきたお客さんのそんな声を聞くだけで嬉しくなりました。
「途中で髪を引っ張られたの、ホント怖かった」
その言葉に、「え?」と思いました。
髪を引っ張る演出などなかったのです。
そもそもお化けがお客さんに直接触れるのは、ルール違反でした。
お化け役の男子が怖がらせようとアドリブでやってるのかもしれないですが、文化祭実行委員にバレたら最悪、出し物が中止になるかもしれません。
私はお客さんの入場を止めて、教室に入り、裏方担当の男子に言いました。
「ねえ、誰か、お客さんの髪引っ張ってるみたいよ、やめさせないと」
「マジ?伝えとく」
けど、それからも出てきたお客さんから、「髪を引っ張られたのに驚いた」という声が聞こえました。
早く止めさせないと。
その時、ちょうど私の休憩時間がきたので、お客さんの列に混ぜてもらいました。
直接言ってやめさせようと思ったのです。
完成したお化け屋敷を一度は体験しようと思ってたので、ちょうどいいタイミングでした。
私の順番がきました。
お客の立場で教室に入ると、違った怖さがありましたが、いかんせんお化けが出てくるタイミングを熟知してしまってるので、素直に怖がれません。
お化け役の男子も私だとわかると、「なんだ」と拍子抜けした様子でした。
ちょうど順路の真ん中くらいに差し掛かりました。
お墓を再現した場所です。
ここには、お化け役は出てこず音で怖がらせるだけでした。
その時、グイッと髪の毛を引っ張られました。
きたっ!
私は勢いよく振り返りました。
その時、見た光景は忘れられません。
乱れた髪のおばあさんが、目を血走らせて私をにらんでいました。
お化け役におばあさんなどいませんでした。
・・・それは本物でした。

気がつくと保健室のベッドの上でした。
「気がついた?」
一緒に受付をやっていたクラスメイトが心配そうに見ていました。
私が気を失っている間に文化祭の1日目は終わっていました。
「お前が一番怖がってどうすんだよ」
お化け役の男子達がぞろぞろと入ってきました。
私は、頭の整理ができず泣き出してしまいました。
みんなキョトンとしています。
私は涙でつっかえつっかえ、何があったか説明しました。
「ごめん、俺のせいかも・・・」
お化け役の中の一人の男子が言いました。
彼が言うには、お墓を再現するのにちょうどいいと思って、近所のお寺で捨てられていた卒塔婆を拝借してきたというのです。
なんて罰当たりなことをするんだと、みんなでその男子を非難しました。
翌日、その卒塔婆を外すと、誰も髪を引っ張られることはなくなりました。
後日、卒塔婆をお寺に返しに行くと、きちんと供養して焼却する前になくなったので、困っていたとのことでした。
私たちは、住職さんに謝罪をし、卒塔婆の供養に立ち会わせていただきました。
あのおばあさんは、自分の卒塔婆が盗られて怒っていたのかもしれません。

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