第73話「エレベーター」

先日、高校の友達と3人でネイルサロンに行こうという話になった。
サロンは、駅近くの雑居ビルの7階にあったので、私たちは、エレベーターに乗り込んだ。
乗客は私たち3人だけだった。
ところが、私が「閉」ボタンを押した瞬間、重量制限のブザーが鳴った。
たった3人しか乗っていないのに・・・。
何度、「閉」ボタンを押してもブザーは鳴り続けた。
重量制限は1000キログラムになっているし、スペースだってあいていた。
「故障??」と私たちは苦笑いするしかなかった。
「私たちがすごい重いみたいじゃない?」
「ちょー失礼、このエレベーター」
2、3分待ってみても状況は変わらなかったので、仕方なく階段で行くことにして、エレベーターを降りると、ビルの入口の方から男の人が駆けつけてきた。
「大丈夫ですか!?」
警備員さんだった。
よっぽど急いで来たのだろう、息を切らしていた。
「どうかしたんですか?」
不思議に思って私たちは聞いた。
「カメラを見ていたら、エレベーターの中で君達が大勢の人たちにしがみつかれているのが見えたんで」と警備員さんは言った。
「え?」
振り返ると、ちょうど、エレベーターのドアがガチャンとしまるところだった。
閉じ切る瞬間、ドアの隙間からこちらを見つめるいくつもの目が見えた気がする・・・。

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