第32話「霊感」

2016/09/01

自分には霊感があるって言うヤツいるじゃないですか。

でも、そういうヤツってたいがい目立ちたがり屋っていうか、本当に見えてんのって思うヤツばっかりじゃないですか?
だいたい、本当に幽霊が見えてたら、あまりそういうのって軽々しく人に言わない気がするんですよね。
で、俺の小学校の同級生にも〝自称″霊感があるっていうヤツがいて。
仮にXとしますね。Xの力を見てみようってことになって、言いだしっぺのYと俺と3人で近所の廃病院に行ったんですよ。
着いた途端、「ここ、やばいよ、絶対やばいよ」ってXが言うわけです。
俺は疑っているもんだから、ちょっと意地悪したくなって、
「どこにいんの?」って聞いたんです。
そしたら、Xが病院の4階の窓を指さしたんです。
「あそこに看護婦さんが立っている」
俺には何も見えませんでした。
「何も見えないけどな」とYも同意しました。
「いるって。ここは、やばすぎる。帰ろう」
そう言って、Xは引き返そうとしました。
Yは中に入りたがりましたが、俺が止めました。やばそうだったから。
帰り道、Xはドヤ顔でさっきの廃病院の幽霊について語り続けました。
俺は白々しい顔で聞いていました。だって、Xが見えてないのわかってるから。
俺には、はっきり見えてました。正面玄関に立っている血まみれの若い女性の幽霊が。
その女の幽霊はXの身体に抱き着いてついてきてました。
俺は余計なこと言いませんでした。だって、こっちがとり憑かれたら困るし。自己責任ってヤツです。
Xは女の幽霊を連れたまま家に帰っていきました。

後日。Xは自転車で事故を起こしました。
病院に担ぎ込まれたXは、額がぱっくり割れていたそうです。
Xにとり憑いていた女の幽霊と同じ怪我でした。
幸い命に別条はなかったので、Xにとって、いい薬になってればと思います。

霊感があるなんて、滅多なことで人に言うものじゃないって話です。

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