電車の怖い話 #67

2017/10/24

 

会社の飲み会の帰り、方向が同じ後輩と電車で一緒に帰っていた時のこと。
運良く席が並んで二つ空いていたので、私は迷わず座った。
当然、横に後輩が座るものと思っていたが、後輩は立ったままだった。
他の乗客が座る気配もない。
しばらく雑談していると、後輩が営業で歩き回るから足が痛くて、とこぼし始めた。
「なら、座りなよ」と私は隣の空いている席をぽんぽんと叩いた。
すると、後輩は黙り込んでしまった。
青い顔をして、口数も少なくなった。
酔いが回ったのかと思って「大丈夫?」と聞くと、「先輩、降りましょう」と後輩が言う。
私は後輩の体調を気遣って、次の駅で電車を降りることにした。
降りた途端、後輩が息巻いて言った。
「先輩の隣に座ってた人、おかしいです」
「何言ってるの?私の隣は空いてたでしょ。なんで座らなかったの?」
「空いてなんていませんでしたよ!スーツの男の人がずっと座ってたましたよ」
私が、隣の席をぽんぽんと叩いた時、男の身体を私の手が通り抜けたのだと後輩はいう。
「・・・まさかぁ」と私は笑った。
その時だった。
「ひっ」急に後輩が変な声を出した。
後輩の視線は私の背後に向けられている。
振り返ると、スーツを着た男が俯いて立っていた・・・。

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