月岡温泉の怖い話

 

これは、先日、会社の忘年会で新潟県にある月岡温泉に宿泊した時に体験した怖い話です。

月岡温泉は、 硫黄成分濃度の高さで知られ温泉の硫黄含有量は日本で2位。
エメラルドブルーの色をした温泉は美肌効果が高く、美人の湯とも称されているといいます。

私達が宿泊する旅館は、外観こそ古かったですが、
中は最近リニューアルされたらしく、
新しい畳が敷かれた和室はい草のいい香りがしました。

ただ、部屋に入った瞬間、何か言い表しようがない嫌な感じがしました。
私は同僚3人と4人部屋で泊まることになっていたのですけど、
おかしなことを言って忘年会の雰囲気を壊すのも良くないと思い、
黙って我慢することにしました。

硫黄が香る名物の温泉につかった後は宴会でした。
しこたま飲んでカラオケを歌った後、同部屋の3人は近くのスナックに飲み直しにいきました。
私は、急ぎの仕事があったので1人だけ部屋に戻って作業することにしました。

部屋に戻ると、また嫌なものを感じました。
圧迫感というか胸焼けのような感覚です。
気のせいだと自分に言い聞かせ、ノートPCを開いて作業を始めました。

なかなか思うように仕事がはかどらぬまま30分程度過ぎた頃でした。
部屋の中に人の気配を感じました。
3人が帰ってきたのだろうかと思いましたがそうではありませんでした。
部屋には私以外誰もいません。
はじめは勘違いかと思いましたが、
近くに誰かがいる気配は一向に消えませんでした。
透明人間に視られているような気持ち悪さがありました。
空気が悪いのかと思って窓を開けようと思いました。
窓ガラスを開けた瞬間、私はギョッとしました。
一瞬だけガラスが反射して自分と部屋の様子が鏡のように見えたのですが、
部屋に私とは違う人影が立っていたように見えたのです。
慌てて振り返りましたが誰もいませんでした。
窓を開け閉めしてみても、もう人影が見えることはありませんでした。

仕事に戻ろうとしても集中できませんでした。
タバコを吸って、ささくれだった神経を鎮めようとしました。
その時、今度はポタポタと音が聴こえてきました。
洗面所の蛇口から水滴が垂れる音でした。
さっきまではこんな音していただろうか・・・。
私は蛇口をきつく閉め直しながら不思議に思いました。

コンコン!

突然のノックの音に私はビクッとドアに向き直りました。
奇妙な出来事が続くので神経が過敏になっていました。
ようやく3人が帰ってきたのだろう、安堵してドアを開けると、
そこには誰もいませんでした・・・。
廊下に顔を出して左右を見ても人の姿はありません。

この部屋はおかしい。
私は確信しました。
3人に「フロントに鍵を預ける」とメールを打ち、
私は温泉に行こうと思いました。
とにかく人がいるところに行きたいと思いました。
浴衣に着替えタオルを準備していると、突然、部屋の電気が消えました。
私は慌てて壁を手探りして電気のスイッチを探しました。
しかし、私がスイッチを押すことなく電気は再び点灯しました。

慌てた拍子に浴衣の帯が解けていました。
周囲を探すと帯はあり得ない場所にありました・・・。

部屋の梁に結ばれた帯の先は丸く輪が作られていました。
一瞬の暗闇で”何か”が私の帯を盗み、首吊りの輪を作ったのです。
帯は、”何か”重いモノがぶら下がっているかのようにピンと張りギシギシと音をたてて揺れ始めました。
私は悲鳴を上げて廊下に転げ出ました。
ちょうどスナックから帰ってきた3人が私を見つけて怪訝そうにしていました。

私が3人に部屋で起きたことを包み隠さず話すと、
3人は夢でも見たのだと笑うだけでした。
笑い者にはなりましたが部屋を替えることはできました。
新しい部屋は嫌な感じもせず、ゆっくり眠ることができました。

翌朝、朝食の席で同部屋だった3人と合流しましたが、
3人とも顔色が優れないようでした。
話を聞くと、
3人とも金縛りやおかしな人影を目撃するという怪奇現象に見舞われて朝までろくに寝られなかったといいます。
やはり私達が泊まった部屋には何かがあったのだと思います・・・。

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