【怖い話】道をたずねて・・・

 

先日、出かけていた時、
道に迷ってしまって、
通りかかった地元の人っぽい男性に道をたずねました。

男性は、道順を教えてくれましたが、
説明を終えると上目遣いに私を見てきました。
「なにしに、行くの?」
男性の目つきが何とも気味が悪くて、ゾゾと寒気がしました。
男性は私と同じ20代の前半に見えましたが、
よく見ると、上下スウェット姿な上、髪もボサボサで無精髭をはやしていました。
真面目に仕事もせず、平日から遊び歩いているような類の人だろうか、と怖くなりました。
「・・・用がありまして。ありがとうございました」
私は会釈もそこそこに踵を返して、
足早に歩き去りました。

しばらく、
教えてもらった道を歩いていきました。
ふと、首筋がチリチリするような不快感があって、後ろを振り返りました。
サッと人影が物陰に隠れるのが一瞬見えました。
人影は、さきほど道をたずねた男性のように見えました。
まさか、つけられている?
私は早足で先を急ぎました。

次の角を曲がる直前、一瞬振り返ると、
姿勢を低くして小走りで向かってくる男性がはっきり見えました。

心臓が跳ね上がりました。
私は全速力で逃げました。
目的地まで、もうすぐそこです。
はやく到着しようと思いました。
建物に逃げ込めば、それ以上は追ってこないような気がしました。

目指す建物が見えてきました。
閉まっている門扉の上から手を入れ、
錠を外しました。

その時、後ろから抱きすくめられました。
衝撃で息が止まるかと思いました。
ハァハァという荒い息遣いが耳元で聞こえました。
私は暴れました。
あとちょっとなのに・・・!
「早まるな!」
男性の声にハッとしました。
目の前に聳える廃墟の洋館。
・・・私は、なぜこんな場所に来たのだろう。
風が化け物の唸り声のような音を立てて吹き抜けました。

後で男性から聞いた話ですが、
その場所は、自殺の名所として地元で有名な家なのだそうです。
なぜか県外や遠方からわざわざ自殺をしに来る
人が後を絶たないのだといいます。
私は死にたいなどこれっぽっちも思っていませんでした。
何か悪いモノに引かれてしまったのだと、今は理解しています。

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