【怖い話】一週間前の花火大会

 

高校2年の夏のこと・・・。
付き合っていた彼女と自転車を押しながら高校から歩いて帰っていると、ドン!と盛大な音がした。

見ると、山の向こうから花火が打ち上がっていた。
位置からして隣町の花火大会が始まったようだ。

次々と打ち上がる色とりどりの花火を見ながら、
内心、俺は焦っていた。
花火大会は来週だと思い込んでいたのだ。
俺が勘違いしていたようだ。
楽しみにしていた彼女がさぞ怒っているかと思って、横顔をうかがうと、彼女も不思議そうにしていた。
「アレ、花火大会、今日だっけ?」
彼女も勘違いしていたようだ。
「ごめん。来週だと思ってた」と俺が謝ると、「私も」と彼女が答えた。
どうして二人して勘違いしたのかわからないけど、
山向こうに小さく見える花火も風流だったので、
その場で二人で花火を眺めることにした・・・。

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浴衣姿の女子2人が縁石に座って花火を見上げている。
「なんで今年は花火大会一週間ずらしたんだろ?」
「え?知らないの?」
「知らない」
「昔、隣町の高校に仲がいいカップルがいたんだけど、花火大会に向かう途中、事故で二人とも死んじゃったんだって・・・けど、その年の花火大会会場で死んだはずのそのカップルを何人も目撃してたらしくて。その年以来、花火大会になると二人の幽霊が現れるらしいよ」
「・・・嘘」
「それだけじゃなくて、花火が不発で落ちてきたり、おかしなことが頻発したんだって。で、お盆に花火大会をやるのがよくないんじゃないかってことになってずらしたらしいよ」

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花火大会が終わると夏の終わりを告げられたような寂しい気持ちが込み上げてきた。
きっと彼女も同じだろう。
「また、来年も花火見ようね」
彼女の目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えた。
「そうだね」
俺達は、並んで歩き出した。

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