【怖い話】ある日、部屋に帰ると・・・ #276

 

ある日のこと。
仕事でくたくたに疲れ果てて、今住んでいるマンションに帰った時には、朝方8時を過ぎていた。

半分ボーッとしながら、玄関の戸を開けて俺は固まった。

リビングに、見知らぬ男性が背を向けて立っていた。

まさか寝ぼけて階を間違えてしまったのか。
慌てて部屋から出た。

けど、改めて考えてみると部屋番号は合っているし、さっき確実に鍵を開けてから入った。

では、リビングにいた人物は誰だ・・・。
おそるおそる玄関を開けて中を確認した。
・・・一瞬で男性の姿は消えていた。

クローゼットやお風呂場に隠れていないかもチェックしたけれど、どこにもいなかった。
窓にも鍵がしっかりかかっていた。

・・・ついに幽霊を見てしまったようだ。
あんなにはっきり見えるとは思わなかった。
興奮がさめず、誰かにこのことを共有したかった。
そうだ、”彼女”に教えてあげよう。

その時、背後に誰かの気配を感じた。
振り返ると、そこには、いるはずのない”彼女”が立っていた。
“彼女”は俺を見て、悲鳴を上げた。

冷たい手錠の感触が手首に痛かった。
「勝手に合鍵を作って私が出掛けている間に入り込んでいたみたいです」
“彼女”が警察官に説明している声がした。

「・・・いえ、知らない人です。今日はたまたま会社に行く途中で体調が悪くなって帰ってきたんです」

あまりに急だったので隠れるひまがなかった。
もう少し余裕があれば”彼女”が不用品を詰め込んだ押し入れに隠れられたのだが。
「最近、モノの位置が変わってたり、日用品の減りが早いから、おかしいと思ってたんです・・・」

「・・・おい、なにがおかしい!?」
俺に手錠をかけた警察官が睨んで言った。
顔に笑みが浮かんでしまっていたらしい。

それは、笑いたくもなるだろう。
この部屋には俺よりも怖い幽霊が住みついているのだから。
“彼女”も警察官もそれをわかっていない。
俺は部屋のモノをむやみに動かしたりなどしていないのだ。
きっとテリトリーを荒らされた幽霊の警告に違いない。
この後、彼女がどんな目に遭うか、見届けたかったが、
捕まってしまっては仕方がない。
俺は内心でほくそ笑みながら、パトカーに連行された。

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