名所の崖 #243

2017/12/01

 

僕は自転車が好きで、休日になると、よく一人で遠出する。
新しい場所に行けば新しい体験が待っている。
けど、中には恐ろしい体験もある・・・。

これは、某県の海沿いの道を走っていた時に体験した怖い話だ。
海風に吹かれながら海岸沿いの国道を走ること1時間。
気持ちよく汗をかいたところで、小さな駐車場を見つけた。
自転車を停め、飲み物を飲んでいると、駐車場から海の方へ続く小道があることに気づいた。
小道を進んでみると、海が見渡せる崖に出た。
火曜サスペンス劇場にでも出てきそうな切り立った崖で、柵から波間を見下ろすと、身がすくむような高さがあった。
眺めが楽しみる景勝地のようだ。
案内板が立っていたので見てみた。
ところが、それは、案内板ではなかった。
「一人で悩まず、相談を。心の悩み相談窓口に電話ください」
ここは自殺の名所なのかもしれない。
うわっと思い、すぐに引き返そうとしたら、5歳くらいの男の子が柵から身を乗り出しているのが見えた。
「ちょっと!危ないよ!」
男の子は、風に飛ばされ柵の外に出た帽子を取ろうとしているようだ。
僕は男の子を柵からおろして、代わりに帽子に手を伸ばそうとした。
その時、柵に、イタズラで彫られた文字のようなものに目が留まった。
「ミンナジサツデハナイ」
なんだろう・・・。
奇妙なメッセージを見たせいで、僕は帽子に伸ばす手を止めた。
後から考えると、それが幸いしたのではないかと思う。
次の瞬間、さっきまで目の前にあった帽子が消えていた。
振り返ると男の子の姿も消えていた。
頭が真っ白になった。
・・・わけがわからなかった。
まさか、幽霊・・・?
その時、さっきのメッセージが頭の中で急に意味をなした。
『みんな自殺ではない』
・・・ということは・・・誰かに殺された?
僕は慌てて自転車に戻ると急いでその場を離れた。
一度だけ後ろを振り返った時、見間違えかもしれないけど、
小さな子供が道路の真ん中に立って、こちらを見ていた気がした。

-心霊スポット, 怖い話