大学時代の友達に呼ばれて、アパートに遊びに行った時のことだ。
部屋に入るなり、僕は嫌なものを感じた。
日当たりとは関係ない薄暗さ。
額がチリチリするような不快感。
「なんだよ?」
「・・・ここって、もしかして事故物件?」
「はあ?」
人の部屋に上がるなり「事故物件か」なんて、失礼なのはわかっている。
けど、昔から僕はこの手の感覚が鋭い。
今まで外れたことはない。
「違うに決まってるだろ」
じゃっかんムカつかせてしまったようだ。
「ほんとに?・・・俺さ、言ってなかったけど、そういうのわかるんだ」
「事故物件かどうかってこと?」
「そう。人がひどい死に方をした家に入ると、額のとこがチリチリ痛むんだ」
「だからって・・・」
「今まで間違いなかったからそうだって」
「いや、事故物件じゃないし」
そんな押し問答がしばらく続き、埒が明かないから、事故物件サイトで検索してみようということになった。
友達のデスクトップでサイトにアクセスして、住所を入力する。
事故物件を表すマークはついてなかった。
「ほら、やっぱり!」
けど、僕は納得いかなかった。
僕の勘が鈍ったのだろうか。
いや、そんな気はしない。
この部屋には何かある。
僕は部屋を見回した。
「その押し入れあたりから、なんか感じる。見ていいか?」
「別にいいけど。仕事道具が入ってるだけだぜ?」
僕は押し入れの戸を開けて、固まった。
「これって・・・」
ノコギリや鉈やハンマーがしまわれていた。
赤黒い染みがついている。
・・・いったいこれは。
ハッと振り返ると友達が包丁を握って立っていった。
「だから、事故物件じゃないって言ったろ?まだバレてないんだから」