事故物件の怖い話 #242
大学時代の友達に呼ばれて、アパートに遊びに行った時のことだ。
部屋に入るなり、僕は嫌なものを感じた。
日当たりとは関係ない薄暗さ。
額がチリチリするような不快感。
「なんだよ?」
「・・・ここって、もしかして事故物件?」
「はあ?」
人の部屋に上がるなり「事故物件か」なんて、失礼なのはわかっている。
けど、昔から僕はこの手の感覚が鋭い。
今まで外れたことはない。
「違うに決まってるだろ」
じゃっかんムカつかせてしまったようだ。
「ほんとに?・・・俺さ、言ってなかったけど、そういうのわかるんだ」
「事故物件かどうかってこと?」
「そう。人がひどい死に方をした家に入ると、額のとこがチリチリ痛むんだ」
「だからって・・・」
「今まで間違いなかったからそうだって」
「いや、事故物件じゃないし」
そんな押し問答がしばらく続き、埒が明かないから、事故物件サイトで検索してみようということになった。
友達のデスクトップでサイトにアクセスして、住所を入力する。
事故物件を表すマークはついてなかった。
「ほら、やっぱり!」
けど、僕は納得いかなかった。
僕の勘が鈍ったのだろうか。
いや、そんな気はしない。
この部屋には何かある。
僕は部屋を見回した。
「その押し入れあたりから、なんか感じる。見ていいか?」
「別にいいけど。仕事道具が入ってるだけだぜ?」
僕は押し入れの戸を開けて、固まった。
「これって・・・」
ノコギリや鉈やハンマーがしまわれていた。
赤黒い染みがついている。
・・・いったいこれは。
ハッと振り返ると友達が包丁を握って立っていった。
「だから、事故物件じゃないって言ったろ?まだバレてないんだから」