観覧車 #052

2017/10/25

 

この前、彼女と遊園地でデートしていた時のこと。
一通り色々なアトラクションで遊んだ後、最後に観覧車に乗ろうということになった。
観覧車は小高い丘の上にあった。
カップルや家族連れが順番待ちをしていた。
最後尾に並んで5分くらいで自分たちの順番が回ってきた。
さあ乗ろうと思って二人で足を踏み出したら係員のおっちゃんに止められた。
それまで、係員のおっちゃんは一台一台のゴンドラに順番に客を乗せていたのに、自分たちの時だけゴンドラを一台飛ばしたのだ。
不思議に思って彼女と二人で顔を見合わせたが、すぐに次のゴンドラが来たので、それ以上は気にしなかった。
ゆっくりとゴンドラが上がっていき、照明に照らされた遊園地のアトラクションの数々や、街の夜景がパノラマのようにだんだんと広がって見えてくる。
「きれい」と彼女が喜んでいるので俺も満足だった。
ちょうどゴンドラがてっぺんにさしかかった時だった。
「嘘っ」と彼女が驚いたように声を上げた。
彼女の視線を追って、俺は凍りついた。
誰も乗っていないはずの一つ前のゴンドラに女の子が乗っていた。
こちらに背中を向けているので顔は見えないが、小学生くらいに見えた。
風景を見るわけでもなくじっと座っている。
しばらくの間、俺と彼女は、その女の子に釘付けになってしまった。
やがて、時計でいうところの3時の位置にゴンドラが近づくにつれ、女の子が乗っている前のゴンドラは死角に入り見えなくなった。
俺と彼女は今までの反対側を向き、再び前のゴンドラが見えるのを待った。
次に見えた時には女の子は正面を向いているはずだ。
だけど、次に見えた時に、前のゴンドラに女の子は乗っていなかった。
消えてしまった・・・。
結局、俺たちは終点まで空っぽのゴンドラを見続けていた。
地上に到着しても前のゴンドラが気になって仕方なかった。
係員のおっちゃんは、俺たちの一つ前のゴンドラにはやはり客を乗せなかったようだ。
俺たちが立ち止まって空っぽのゴンドラを見ているのに気づいた係員のおっちゃんが声をかけてきた。
「見えたんだろ?ずっと乗ってるんだよ、あの子」

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