【怖い話】【心霊】葬列 #206

 

これは私が中学生の時に体験した怖い話です。
私の実家があるF町は農業が盛んで、自然が豊かなところでした。
古くから住んでいる家族が多く、近所に住む人たちはたいてい顔見知りでした。
ある日の学校帰りのことでした。
部活を終えて家に向かっていると、ご近所の家の門から人がぞろぞろと出てくるのにでくわしました。
みんな黒い服を着ていました。
男性は黒いネクタイ、女性は黒い着物姿でした。
その人達は、私の横を通りすぎ、私が歩いてきた方向へ去っていきました。
喪服?・・・誰か亡くなったのだろうか。
お母さんからそんな話は聞いてなかったけど。
私は家に帰ると、お母さんにたずねてみました。
「○○さんの家で、誰か亡くなった?」
すると、お母さんは笑って言いました。
「まさか、あの家はみんな元気よ。誰も病気一つしないって、よく言ってるわよ」
その時、電話が鳴りました。
電話に出たお母さんの顔色が変わりました。
「ええ、そうなの?・・・何かお手伝いすることある?うん、うん・・・」
物々しいことが起きたようでした。
電話を切った母が言いました。
「○○さん家のお父さんが、突然倒れて亡くなったって。心臓発作だったみたい」
「え・・・!?いつ?」
「今さっきだって。あなた、何か見たの?」
動揺を隠せませんでした。
私はさっき自分が○○さんの家の前で見た黒い服の人達の話を母にしました。
でも、改めて考えてみると、おかしいのです。
今さっき亡くなったのだとしたら、お通夜もお葬式もまだのはずです。
あの喪服の集団はいったい何だったのでしょうか。
「・・・あなたが見たもののこと、誰にも喋っちゃダメよ」
母もおかしいと思ったのか、そう私に言い含めて○○さんの家にお手伝いに行きました。
翌日、斎場でお通夜が行われました。
喪服を着た○○さんの親戚や近所の人が大勢集まっていました。
お焼香を終えると、私だけ一足先に帰ることになりました。
斎場の玄関を抜け、私はハッと息をのみました。
昨日目撃した、黒い服の人達が斎場の前に立っていたのです。
老若男女が混ざっていますが、やはり全員が喪服です。
彼らは何者なのでしょうか?
お迎えにきた、○○さんの家のご先祖様なのでしょうか?
ただ・・・どうも妙なのですが、彼らは全員口元に笑みを浮かべていたのです。
私は彼らと目を合わせないよう、斎場を後にしました・・・。

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