【怖い話】【心霊】第171話「花火大会の怖い話」

 

初めてできた彼女と花火大会に行った時の話です。
打ち上げ会場近くは人混みがすごいので、僕たちは離れた河川敷で花火を見ることにしました。
レジャーシートを地面に敷いて、屋台で買った焼きそばやカキ氷などを食べて打ち上げ開始を待っていました。
河川敷は真っ暗で僕たち以外にひとけはありませんでした。
けど、浴衣を着た彼女と、寄り添ってくだらない話をしているだけで幸せな気持ちでした。
ドーン!ドーン!
時間になって花火が打ち上がり始めました。
赤や緑や黄色の大輪の花が夜空に咲いているようでした。
花火が打ち上がるたび、辺りが明るく照らし出され、その一瞬だけ見える彼女の横顔を見ているだけで、夢のようでした。
その時です・・・。
花火が打ちあがって明るくなった瞬間、河川敷の向こうの方に人影が一瞬見えました。僕たち以外にも花火を見ている人がいるようでした。
ドーン!ドーン!ドーン!
何発も続けて花火が打ち上がり、ハレーションを起こしたように一面が白く輝きました。
向こうに人影がまた見えました。
なぜだかわかりませんが、その人影が無性に気になりました。
打ち上げが小休止に入り、再び真っ暗になりました。
彼女は花火に心奪われていて人影には気づいていないようでした。
ドーン!ドーン!
打ち上げが始まって明るくなると、また人影が見えました。
ハッとしました。
さっきより、人影が近くなっていたのです。
一瞬、暗くなって再び明るくなると、さらに人影はこちらに近づいてきていました。人影は大人の男性のようで、こちらに背中を向けていました。
花火が打ち上がるたび、男性は僕たちの方に、だんだん近づいてきているようです。
なんだか不気味でした・・・。
ほんの一瞬、真っ暗になって、明るくなった次の瞬間に人影は移動しているのです。しかも、花火が連続で打ちあがって明るいうちは微塵も動いている素ぶりがありません。
まるで暗い時だけ移動を繰り返して、僕たちに近づいてきているようでした。
「ちょっと移動しようか」
「え?どうして?」
不思議そうにする彼女に、僕はどう説明していいかわかりませんでした。
ドーン!
次の花火が打ち上がりました。
・・・あれ?人影が消えていました。
僕の見間違いだったのでしょうか。
「なんでもない、ごめん・・・」
彼女は怪訝そうでしたが、再び花火を見始めました。
ドーン!ドーン!ドーン!
連続の打ち上げ花火が上がり、辺り一面が、白く浮かび上がりました。
目を疑いました。
僕たち2人を大勢の男女が囲み、見下ろしていたのです。
「うわぁぁぁ!」「きゃぁぁぁ!」僕と彼女は反射的に叫び声を上げました。
花火の閃光が夜空に溶けると、暗闇で何も見えなくなり、僕たちはさらにパニックを起こしました。
僕は咄嗟に、隣の彼女の手を取りました。
続いて赤い花火が上がり、辺りを真っ赤に照らしました。
男女の集団は消えていました。
・・・よかった。そう思って、隣にいる彼女を見ると、
僕の方を見て笑っていました。
彼女とはまったく別人の血だらけの女性が・・・。
そこからの記憶はありません。
気がつくと花火大会は終わっていて、帰りの人たちが川の土手をゾロゾロ歩いているのが見えました。
彼女は、僕の隣で気を失っていました。
あれは花火が打ちあがった時だけ姿を現す幽霊だったのでしょうか。
正体は、いまだにわかりません・・・。

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